2017年01月31日

〔ARIC情勢分析ブログ特別編〕 アメリカにおける反差別・反レイシズム規範

 前回〔http://antiracism-info.sblo.jp/category/4406422-1.html〕は、今やアメリカ合衆国の大統領であるドナルド・トランプ氏による差別言動とヘイトスピーチ・ヘイトクライム急増との関係を分析し、政治家によるヘイトスピーチ(差別扇動)が著しい扇動効果を帯びていることについて考えました。

 今回は、アメリカ合衆国(米国)では、どのようにこうしたレイシズムを規制しているのかということについて考えたいと思います。

 同水準の反レイシズム政策・規範が存在する欧州各国と比べたとき、米国に特徴的なのは、差別煽動言論を早期から法規制の対象にしてきた欧州では認められない、ヘイトスピーチさえ含む「表現の自由」が、連邦法で「保護」されていることでしょう。しかし他方で、米国でレイシストが何を口にできるかについては、それなりの社会的制限が存在しているのです。こうした取り組みの一つとして、例えば、ヘイトスピーチを禁止する規定を大学構内において設けさせるという取り組みがあります。そして、この取り組みは、反レイシズム政策・規範がないに等しい日本において反レイシズム規範を作っていくうえで、参考にすることができるでしょう。以下ではなぜそう言えるのかについても触れようと思います。(「反レイシズム」規範が日本にないことについては、これまでに掲載したブログを参照してください。〔http://antiracism-info.sblo.jp/article/176974425.html〕)


・米国市民社会に根づく反差別・反レイシズム規範

 さて、これまでのトランプ氏の発言は多くが批判的に報道されてきました。黒人や移民・難民、LGBT、女性、ユダヤ人といった様々な対象に数々の差別発言を繰り返してきたのは周知のことでしょう。前回のブログ〔http://antiracism-info.sblo.jp/category/4406422-1.html〕でも彼の発言をまとめておきました。

 そしてトランプ氏の大統領就任前には、そのようなトランプ氏の言動や政策、そして就任に対して、批判の声とともに反対運動が米国各地で広がりをみせました。

 例えば、「1960年代のアメリカ公民権運動を代表する人物で、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師と共に1963年のワシントン大行進に参加した民主党ジョージア州選出のジョン・ルイス下院議員(76)」は、「ドナルド・トランプ次期大統領を「正統な大統領とは認めない」と述べ、トランプ氏の大統領就任式に参加しないと表明し」ました[T]。そして彼に続き、大統領就任式をボイコットするという動きが政界で広がりました[U]。

 他方では、反トランプや反差別を掲げる街頭デモ行進[V]のほか、トランプ氏に関連する商品の販売を取りやめる動き[W]や、弁護士により、移民のための無料法律ワークショップが催されていること[X]などが報じられていました。そのほかにも、学生や移民、CRR(Center for Reproductive Rights)などが各自組織する草の根の運動がアメリカ各地で生じているようです[Y]。

 ここからは、状況に応じて突発的に反差別・反レイシズムを掲げる運動が生じる土壌が、米国には存在することを窺えます。

 しかしながら、冒頭でも述べたように米国では、差別煽動言論を早期から法規制の対象にしてきた欧州では認められない、ヘイトスピーチさえ含む「表現の自由」が、連邦法で「保護」されているのです。

 差別言論を除き、差別を動機とした犯罪(ヘイトクライム)の取り締まりに関しては、アメリカ合衆国は、事実上ほかのすべての国に先駆けて法を作り出し、精力的に執行してきました。米国が、他の国々が条項を制定する際のモデルとなったのです。ほかの欧州と比べた際に米国に特殊なのは、差別言論が、法規制の対象となっていないということです。以上では、米国市民社会が、それでもなお、反レイシズム政策に無関心なわけではないということについて、最近の事例をまとめてみました。以下では、その米国の特殊性について考えていきます。


・なぜ、差別言論は法規制の対象になっていないのか?

 ここでは、「レイシズムをどうするか」という問いが常に眼前に存在し、その問いを前提とした上で、「言論の自由」の保護と言論規制(自由と反レイシズム)とのあいだでバランスをとってきたアメリカ合衆国の歴史を、簡単に振り返ることにしましょう。そこから、差別言論が法規制の対象になっていないゆえんが分かるからです。

 黒人奴隷制とともに始まったアメリカ合衆国では、奴隷制が公的に廃止されることになる南北戦争(1861〜65年)を得てもなお、黒人差別が根強く残存します。投票権や就職、学校、公共施設など、ありとあらゆるところで黒人差別が浸透していたのです。南部においては、黒人に対する「リンチや放火、果ては殺人までのレイシズム暴力が吹き荒れて」いました。

 もちろん南北戦争以後には、人種の平等を達成しようとする新たな動きも生まれます。1866年から75年にかけては、初期の公民権法が連保議会により次々に制定されることになります。しかしながら、1883年にそれらは無効化されてしまうのです。「公共施設において黒人への差別を禁じることは憲法が保障する私的および個人的権利として自由に対して制約を課すことになる」というのが、公民権裁判で最高裁が出した判決でした。そして「分離すれど平等」と称される原則に基づいた黒人の法的隔離が生まれ、以後、広くかつ深く米国社会に根付いていくことになります。[Z]

 そうして1920年代から30年代になると、連邦最高裁は、「連邦議会は…言論の自由を制限する法律を制定してはならない」という修正第一条を、各州にも適用しようとし始めるのです。つまりこの時期から、連邦最高裁が、「言論の自由」の保護を拡大していく傾向を有するようになるのです[[]。
ただし1940年代から1950年代にかけては、その傾向が一時中断されることになります。「言論の自由」を擁護する修正第一条によっても「喧嘩言葉」と「集団に対する名誉棄損」は保護され得ない、という判断が下されることになるのです。つまり、相手を罵る「喧嘩言葉」や「集団に対する名誉棄損」は「言論の自由」の範疇にはない、とされたのでした。

 しかし1960年代から70年代にかけては再度、「言論の自由」を最大限重視する判決が最高裁で集中的に出されることになるのです。そこでは、人種やエスニシティ、あるいは宗教にかかわるマイノリティを攻撃する言論にさえ、「言論の自由」として保護するロジックが適用されたのです。こうして、連邦政府が「言論の自由」をアメリカの中心的価値として定着させるに至るのです。[\]

 では、公民権運動や反戦運動が激しく行われた時代でもあるこの60年代から70年代の時期に、差別言論さえも「言論の自由」として保護するという方向へ圧力がかかったのは、いったいなぜなのでしょうか?

このことについては、エリック・ブライッシュによって、以下2組の動向が指摘されます。

@ まず、「集団に対する名誉棄損禁止法(20世紀前半に制定された最大で8つの州で成立していた、人種や宗教などグループへの差別発言規制法)が、ユダヤ系コミュニティの中で支持を失」うことになったことです。理由としては、「言論の自由を国が弾圧する危険に加え、当時ユダヤ系知識人が、米国でのネオナチを欧州のそれとは異なり実社会に根付いていないものと考え、「脅威というよりはむしろ苛立たしい厄介者」とみなし始めていたため」といわれています。

A 次に、1960年代になると、公民権運動や反戦運動も、言論の自由の原理についてユダヤ系コミュニティと同様の態度をとるようになることです。アフリカ系アメリカ人は、白人至上主義の法に抗するために、広く開かれた言論を許容する法を必要としていました。また、ヴェトナム戦争に対する反戦運動家(一部は公民権運動にもかかわっていた)は、政府の政策に反対するために活動する自由を求めていたのです。集団に対する名誉棄損禁止法は確かに黒人などマイノリティを保護しようと作られたものでしたが、当時のアメリカにおいては、彼らはそうした保護を望んではいなかったのです。[]]

 このように、国家権力によるマイノリティの弾圧に抵抗し、マイノリティの言論の自由を徹底的に擁護するという特殊な文脈がそこにはあったのです。そしてこうした特殊な文脈から、米国では、「行為」/「言論」の二分法を必要とする反レイシズム規範が形成されることになるのです。[Ⅺ]その結果、アメリカにおける反レイシズム政策のもとでは、差別言論が法規制の対象外となります。

 他方で「行為」・差別犯罪については、法規制の対象となるのです。人種差別に動機づけられた暴力に対してはそもそも、連邦レベルで実質的な条項を制定しようという課題に議会が取り組み始めたのが、1950年代から1960年代の公民権時代になってようやくのことでしたが、公民権運動や、「偏見に動機づけられた犯罪への関心」を増価させ、共闘したマイノリティ・グループ(エスニシティや宗教、ジェンダー・セクチュアリティー)による運動、さらに被害者権利団体によって、差別に動機づけられた暴力に規制をかける組みが推し進められ、ヘイトクライム法が1990年に成立に至るのです。ちなみに、ヘイトクライム[Ⅻ]という語はこうした運動を背景にして概念化されることになります。

 こうしたレイシズムと戦う運動が、1960年代から現在に至るまで、公民権法やその後のヘイトクライム法を成立に至らしめたのです。[]V]そしてこうした闘いの中で、反レイシズム政策・規範、つまり何が差別で何が差別でないかをはっきりさせる反レイシズムのモノサシが、勝ち取られてきたのでした。


・ヘイトスピーチとは?

 ところで「ヘイトスピーチ」とは何でしょうか?

 この言葉は、実は、80年代に米国で生まれ概念化されたものです。以上で述べた米国の特殊な文脈のもとで必要とされた「「行為」/「言論」の二分法を背景としたうえで、後者の「言論」にあたる差別のうち、深刻なものについて犯罪化や対処を求めたり、あるいはその二分法そのものに異議を唱えるマイノリティ知識人から提起された概念」なのです。すなわち、差別禁止法(公民権法)を大前提としたうえで、さらに反レイシズム政策・規範を闘いとるという文脈において、「言論の自由」には到底収まりきらない差別言論を表現するために「ヘイトスピーチ」という語は生まれたのでした。

 他方、欧州・国連においては、半世紀も前から差別(行為)と差別扇動(言論)を等しく法規制の対象にしてきました。そして今日に至るまでにおける反差別政策を改正する試みのなかで、「撲滅するのが困難で厄介なレイシズム」の一つとして差別扇動・ヘイトスピーチが議論されるようにもなってきたのです。

 こうした各国・地域の文脈を踏まえて初めて、現在世界中で問題となっているレイシズムの差別扇動は、「ヘイトスピーチ」という言葉を用いて表現しうるのです。

 そして、ここで肝に銘じておく必要があるのは、差別禁止法が存在しない日本において「ヘイトスピーチ」という語を用いるときには、「レイシズムをどうするかという問い」が抜け落ちてしまわぬよう特に注意が必要であるということです。

 アメリカ合衆国においても、また欧州においても、「ヘイトスピーチ」という語が用いられるのは、差別禁止法が運動によって勝ち取られ、もはやそれが議論の前提となって以後のことです。つまり、今日欧米でなされる「表現・言論の自由」vs「法規制」という構図の議論においては、「差別は禁止しなくてはならない」ということが大前提となっているのです。

 ここを踏まえなければ、「ヘイトスピーチ」が表現と議論にかかわるということで、単に、「表現・言論の自由」vs「法規制」という構図に陥ってしまい、「レイシズムをどうするかという問い」が不在になってしまいかねないでしょう。[]W]


・法規制なき環境における、反レイシズム・反ヘイトスピーチの動き

―大学におけるスピーチコード―

 以上では、差別言動に対する法規制がない中で、レイシストが何を口にできるかについては、それでもなお、制限をかけている米国の反レイシズム政策・規範について考えてきました。ここでは最後に、米国における反レイシズム・反ヘイトスピーチの動きについて、とりわけ大学という空間に注目して概観してみることにしましょう。「議会やほかのさまざまな公的及び私的機関(大学、企業、クラブなど)は、しばしばヘイトスピーチに対して裁判所よりも激しい態度を示してきた」[]W]のです。

 さて、60年代から70年代にかけてアメリカでは、すでに述べたように、「表現の自由」の原則を徹底するという方針がとられることになります。しかし1980年代の初めには、言論の自由と反レイシズムのあいだの緊張関係が極めて深刻なものとなっていきます。そこには、大学キャンパスにおける変化が関係していたのです。

 公民権運動や反戦運動を背景として大学キャンパスに導入された、公立学校での人種隔離と差別撤廃などのアファーマティブ・アクション[]X]は、1970年代以降定着をみせます。その結果、キャンパスがさまざまな人種から構成される場に変化していきます。

 しかし、1980年代に入ると、こうした変化を快く思わない一部のマジョリティによって、人種的マイノリティに対する暴力事件や嫌がらせが頻発するようになっていくのでした。

 こうした状況に対する大学側の具体的な対応策として、この時期には各地の大学で、ヘイトスピーチ禁止の学内規定が儲けられることになります。これが「スピーチコード」と呼ばれるものです。

 とはいえこうしたスピーチコードは、80年代後半から90年代にかけて、複数回にわたって連邦裁判所から否定的な判決を受けることになります。州および連邦裁判所が下した一連の象徴的判決では、ミシガン大学(1989)やウィスコンシン大学(1991)、ミシガン中央大学(1993)、スタンフォード大学の(1995)のスピーチコードについて、それらが過度に広範で特定の見解を規制するものであるとして無効を言い渡されます。例えば、ミシガン大学のスピーチコードで、「人種・エスニシティ・宗教・性・性 的指向・信条・出身国・祖先・年齢・婚姻の有 無・障害・ベトナム戦争への従軍経験に基づいて、個人に汚名を着せたり、苦痛を与えたりする行為(言語的か身体的かは問わない)」が規制の対象とされました。これに対する連邦地方裁判所の判決は、この規制の対象は過度に広範であり、また具体的に何が規制されるかについてもあいまいであるため違憲だというものでした。このような否定的な判決のもとで、大学のスピーチコードは、アメリカ社会において次第に支持を得にくい状況に追い込まれていったのです。

 しかしながら、こうした事態は大学キャンパスにおけるスピーチコードの終焉にはつながりませんでした。そうしたコードはむしろ、この時期に増加したのです。より限定的な文言を作成した大学があった一方で、多くの大学は、裁判所の判決にもかかわらずそのポリシーを維持したのです。[]Y]

 今日における大学キャンパス内ポリシーのほとんどは、雇用法において禁じられているタイプの言論を対象にしたハラスメント禁止規定からなっているようです。また、キャンパスにおいて「脅迫的、敵対的ないし不快な環境」を作り出すヘイトスピーチは、処罰の対象となりうる差別の一形態であると定義している大学もあるとのことです。[]Z]

 大学キャンパスにおけるスピーチコードに関連して、2005年には、オクラホマ大学の学生2人が、人種差別的な歌をビデオで撮影したことを理由に退学に処されています。そこでは、「彼らの所属する団体には、黒人は入会できない」と歌われていたようです。[][]

 また、2014年には、黒人差別発言をした教員が職を失っています。a Fairfield Freshman Schoolに14年間勤めていた科学科教員は、"we do not need another black president."と発言したため、解雇されたようです。[]\]

 「表現の自由」を巡っては今日でも論争が色々とあるようです[]]]が、ポリシーを維持してスピーチコードを掲げる大学は現在、増加傾向にあるようです。[]]T]


 総じてアメリカが合衆国では、連邦法でヘイトスピーチ(差別扇動)をも「言論の自由」によって「保護」しながらもなお、社会的にはヘイトスピーチに対する事実上一定の制限をかけているのでした。例えば、事あるごとに台頭する、冒頭で触れたような草の根の運動や、会社や大学内などにおける規制がそれを象徴しています。そしてその背景には常に「レイシズムをどうするか」と問い続けた闘いがあり、それを背景にして、特殊米国流の反レイシズム政策・規範が勝ち取られてきたのでした。

 日本においても、「レイシズムをどうするか」という視点をもって、日本の文脈に根差した独自の反レイシズム政策・規範を作っていく必要があるでしょう。欧米水準の反レイシズム法がゼロの日本では、まず何よりも包括的差別禁止法制定が最優先課題となるので、じつは「ヘイトスピーチをどうするか」という問題は、それにきちんと向き合うための基本的条件が欠けている、といってもよいでしょう。米国の公民権法や、スピーチコード制定の取り組みからは、(今回は具体的な取り組みについては述べられていませんが、)日本でレイシズムを無くしていく際に個別事案の「モグラたたき」に終わらせるのではなく、差別・レイシズムを禁止するルールを一定区域内で確立していくという点に関して、学ぶべきところが大きいと思います。




【引用・注釈】
[T]The Huffington Post Japan, 2017. 「トランプ氏の大統領就任式に参加しない」キング牧師と共闘したジョン・ルイス議員.
[U]ニューズウィーク日本版ウェブ編集部, 2017. トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジョン・ルイスって誰?.
[V]Junglecity Network, 2017. シアトルでもウィメンズ・マーチ 約3マイルの行進途切れず.
 Junglecity Network, 2017. トランプ大統領に対する抗議活動 シアトル市内近郊や州都オリンピアで展開.
Junglecity( 2017). ジャングルシティ[シアトル情報].
[W]Taylor, K.(2016)
[X]Junglecity Network (2017). シアトル市で移民・難民向けの無料法律ワークショップ開催
[Y]Gobbatt, A. (2017).
[Z]梁英聖(2016:210−212)
[[]エリック・ブライッシュ(2014:113―120)
[\]エリック・ブライッシュ(2014:144)
[]]梁英聖(216:214)
[Ⅺ]レイシズムを「行為」/「言論」に2分するという特殊米国流の二分法については梁英聖(2016:113―116項)が詳しい。
[Ⅻ]梁英聖(2016:217);「ヘイトクライム」という言葉は、差別に動機づけられた暴力のことを指しますが、ここには、差別に動機づけられたものでない通常の暴力よりも重罰化すべき犯罪という意味が込められています。「1980年代から90年代にかけて、エスニシティや宗教、ジェンダー・セクチュアリティーに基づいたマイノリティグループが「偏見に動機づけられた犯罪への関心」を増価させ、共闘し、「自らの関心を明確化する強力な語として「ヘイトクライム」という言葉を用いるように」なったのです」。
[]V]エリック・ブライッシュ(2014:202−225)
[]W]梁英聖(2016:227−230)
[]X]エリック・ブライッシュ(2014:137)
[]Y]梁英聖(2016:212−213); アファーマティブ・アクション(AA)とは。1964年に制定された公民権法に定められた、積極的差別是正措置のことです。AA以外の公民権法の内容をあげておくならば、投票権の差別禁止と、ホテル・レストラン・ガソリンスタンドなど民間施設を含む公共施設での人種隔離の廃止、公立学校での人種隔離と差別撤廃、連邦政府時計屋宇する公共事業での差別撤廃、そして雇用における差別撤廃があげられます。
[]Z]エリック・ブライッシュ(2014:142)及び、明戸隆浩 (2014).
[][]エリック・ブライッシュ(2014:142)
[]\]Janik, R.( 2015); [The video, posted to YouTube Sunday, shows SAE members chanting a slur to refer to black people, referencing lynching and saying that black people will never be admitted to their organization.]
[]]]Michael D. Clark, T. C. E.( 2014)
[]]T]ACLU(2017). たとえばACLU(American Civil Liberties Union)は、ヘイトスピーチコードよりも、言論の自由を重視している。
[]]U]Lukianoff, G.(2012)


【参考文献】
ACLU, 2017. Hate Speech On Campas. [オンライン]
Available at: https://www.aclu.org/other/hate-speech-campus 
ARIC, 2016. 〔ARIC情勢分析ブログ特別編〕 ドナルド・トランプによる「上からの差別扇動」. [オンライン]
Available at: http://antiracism-info.sblo.jp/category/4406422-1.html
Gobbatt, A., 2017. Activism in the age of Trump: meet the leaders of the grassroots resistance. [オンライン]
Available at: https://www.theguardian.com/us-news/2017/jan/19/anti-trump-activists-protest-grassroots-leaders
Janik, R., 2015. University of Oklahoma Expels 2 Students for Racist Chant. [オンライン]
Available at: http://time.com/3739178/university-of-oklahoma-racist-chant/ 
Junglecity Network, 2017. シアトルでもウィメンズ・マーチ 約3マイルの行進途切れず. [オンライン]
Available at: http://www.junglecity.com/news/womens-march-on-seattle-2017-2/
Junglecity Network, 2017. シアトル市で移民・難民向けの無料法律ワークショップ開催. [オンライン]
Available at: http://www.junglecity.com/news/seattle-united-for-immigrants-and-refugees/
Junglecity Network, 2017. トランプ大統領に対する抗議活動 シアトル市内近郊や州都オリンピアで展開. [オンライン]
Available at: http://www.junglecity.com/news/protests-continue-in-seattle-olympia-and-elsewhere/
junglecity, 2017. ジャングルシティ[シアトル情報]. [オンライン]
Available at: https://twitter.com/junglecity/status/822547509713178625
Lukianoff, G., 2012. Speech Codes: The Biggest Scandal On College Campuses Today. [オンライン]
Available at: http://www.forbes.com/sites/realspin/2012/12/19/speech-codes-the-biggest-scandal-on-college-campuses-today/#6788d4ad1409
Michael D. Clark, T. C. E., 2014. Ohio teacher loses job for racist comment. [オンライン]
Available at: http://www.usatoday.com/story/news/nation/2014/04/18/teacher-racism-fired/7876581/
Taylor, K., 2016. An anti-Trump movement is calling for the boycott of these 32 retailers. [オンライン]
Available at: http://www.businessinsider.com/trump-related-businesses-boycotted-2016-11/#zappos-30
The Huffington Post Japan, 2017. 「トランプ氏の大統領就任式に参加しない」キング牧師と共闘したジョン・ルイス議員. [オンライン]
Available at: http://www.huffingtonpost.jp/2017/01/16/trump_n_14209420.html
エリック・ブライッシュ, 2014. ヘイトスピーチ. 明石書店.
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部, 2017. トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジョン・ルイスって誰?. [オンライン]
Available at: http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6737.php
明戸隆浩, 2014. アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈 ──90年代の規制論争における公民権運動の「継承」. [オンライン]
Available at: http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf
梁英聖, 2016. 日本型ヘイトスピーチとは何か. 影書房.
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2016年12月12日

〔ARIC情勢分析ブログ特別編〕 ドナルド・トランプによる「上からの差別扇動」

 ARICは12月14日に一橋大学で緊急企画「世界で台頭するポピュリズム/排外主義と日本」を開催します。(詳しくはこちら http://antiracism-info.com/archives/127483

 今回はそのイベントの中でも取り上げる予定のアメリカ次期大統領のドナルド・トランプ氏と政治家の「上からの差別煽動」の関係について分析したいと思います。


●トランプ氏の選挙中の発言

 ドナルド・トランプ氏は共和党の大統領候補予備選挙の時からマイノリティへの差別発言を繰り返し、マスコミや競争相手の候補から批判を集めてきました。

 以下では選挙期間中のトランプ氏の主要な差別発言を攻撃対象グループごとにまとめました。


攻撃対象

発言

日時・場所

黒人

・トランプ氏に抗議する黒人をリンチする自身の支持者に対して「そいつをつまみ出してくれ。放り出せ!」と発言。その後の取材でも「あの男は痛い目に遭って当然だ。なにしろひどい態度だったからね」。[1]

・2015年11月21日、アラバマ州バーミングハムの自身の集会にて。

・実在しない「犯罪統計局」を出所とする偽「データ」において、白人のアメリカ国民が殺された際に、その加害者の81%が黒人だと主張(FBIの2014年の統計によれば、実際の数字は15%。逆に白人被害者の82%が白人に殺されている)。[2]

・2015年11月22日、Twitter上(現在はリンク先のツイートが削除)。

・KKKの元幹部デーヴィット・デューク氏の支持表明に対して「デューク氏からの支持を断るか」と問われ、(デューク氏という人物について)「何も知らない」「白人至上主義者のことは何も知らない」「どの団体のことを言っているのか分からない」と支持を否定せず(のちに批判を受け支持を拒否)。[3]

・2016年2月28日、CNNのインタビュー番組にて。

移民・難民

・「メキシコはベストではない人々を送り込んでいる。麻薬や犯罪を持ち込むやつらだ。彼らはレイピストだ、中には善良な人もいるかもしれないが」

・2015年6月16日、出馬会見にて。

・(シリア難民への対応について)「もし私が勝利したら、彼らは帰国することになる。彼らには帰ってもらうよ、本当に」

・2015年9月30日の選挙集会にて。

ムスリム

・(イスラム教徒をデータベースに登録すべきだと思うかとの質問に)「それは間違いなくやるつもりだ。絶対にやる。データベース以外にも、たくさんのシステムがあるべきだ」。

・2015年11月19日、記者からの質問に対して。

・「ドナルド・J・トランプは、何が起こっているのかをわが国の指導者らが把握できるまで、イスラム教徒の入国を全面的かつ完全に禁止することを呼び掛ける」[4]

・2015年12月7日のカリフォルニア州の銃乱射事件を受けて。

LGBT

・最高裁が同性婚を合憲とする判決を覆すための判事指名について「真剣に検討する」。

・2015年6月26日、取材にて。

・(同性婚を認めた連邦裁判所判決について)「判断の破棄も含め、見直す必要がある」

・2016年1月末の集会にて。

・(しかし、その後「自分が大統領になったら、LGBTの市民を憎しみに満ちた異質なイデオロギーによる暴力や抑圧から守るために何でもする」と発言。ただ、同日採択された共和党の党綱領には「州による同性婚の禁止を違憲とした2015年の最高裁判決を批判する」と記載されている。)[5]

・2016年7月の共和党全国大会にて。

反ユダヤ

・ヒラリー・クリントン前国務長官の顔写真と並べて、ユダヤ教やユダヤ人を象徴する「ダビデの星」の意味を持つ六角星を配置し、そこへ「史上最も腐敗した候補者」という文字を書き込んだデザインの写真をツイート。[6]

・2016年8月3日、Twitter上にて。

女性

・共和党の大統領予備選討論会で司会を務めた米フォックス・ニュースのメーギン・ケリー氏を批判して「彼女は、ありとあらゆるばかげた質問を私に投げ掛け始めた。彼女の目から血が流れ出ていたのが分かったよ。彼女のどこからであれ血が出ていた」

・2015年8月7日、番組後にて。

・「妊娠中絶を受けた女性は刑罰の対象にすべきだ」(その後、批判を受け「法的責任を負うのは女性ではなく、違法行為を女性に対して行った医師などになるだろう。この場合、女性は子宮内の生命と同じ被害者だ」と発言を修正。)[7]

・2016年3月30日、NSNBCのインタビューにて。

・自身が出演していたリアリティ番組の2005年の映像で「スターなら、女性はやらせてくれるんだ」「プッシー(女性器を指す俗語)をつかんでね。何だってできる」などと発言。[8]

・2016年10月7日、ワシントンポスト紙が報道。


 このようにトランプ氏は多くの差別発言を続けてきました。

 またある調査では、トランプ氏の支持者は(トランプ氏の発言の影響か)黒人に対する偏見が強いことが分かっています。

民主、共和両党員の多数が、白人より黒人を批判的な目で見ているほか、多様な隣人と暮らすことに不安を感じ、アファーマティブアクション(差別是正措置)の政策は白人に対する差別と考えていることも浮き彫りとなった。
こうした懸念は、民主党員より共和党員に強く見られ、特にトランプ氏支持者の黒人に対する見方は最も厳しかった。[9]


●当選後のヘイトクライム・ヘイトスピーチ、世論調査

 選挙期間中から上のような差別発言を連続してきたトランプ氏が11月8日にアメリカの次期大統領に当選しました。トランプ氏の当選後、ヘイトクライム・ヘイトスピーチが多発していることがアメリカの人権団体「南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center)」の発表により分かっています。

 同センターの11月29日付の発表によるとトランプ氏の当選から10日間で「憎悪・差別による嫌がらせや脅迫」が867件記録されました。同センターのリチャード・コーエン氏は実際の数字はこれよりももっと多いと指摘しています。

 一方、同センターの記録は米国でこれらの行為が急増していることを明確にはしていません。しかし、コーエン氏は「わたしたちに憎悪による行為を報告してくる人たちの多くは、このようなことはこれまで経験したことがないと話す」と説明しています。[10]

(同センターのホームページでは差別発生地域や被害を受けたグループの比率などがレポートとしてまとまっています。https://www.splcenter.org/20161129/ten-days-after-harassment-and-intimidation-aftermath-election


20161212trump1.png
(発生地域の分布図、カリフォルニア州の99件を筆頭に全国的に被害が発生している。)

20161212trump2.png20161212trump3.png
(差別を受けたグループの構成比、このグラフからもトランプ氏が選挙期間中に攻撃対象にしていたグループへの差別が行われていることがわかります。)



コーエン氏が言うような「これまで経験したことがない」とはどのような意味なのでしょうか? 同センターのレポートを読むと“トランプ氏が当選したことに連動する”差別行為の“質的な違い”を多くの事例をあげて説明しています。

 “当選と連動する”とは「トランプ氏の選挙運動と、そのスローガンへの直接的な言及を伴っていた」ということです。

 ワシントン(Washington)州のある教師はSPLCに対し、大統領選の翌日に「学校のカフェテリアで昼食時間に『壁を造れ』とコールが繰り返されるのが聞こえた。私が担任するクラスでも『この国で生まれたのでなければ荷物をまとめて出て行け』と叫ぶ生徒がいた。ホールでは『スピック(ヒスパニック系を指す差別的な表現)は出て行け』という声が上がっていた」と報告している。
(略)
 全米各地の教育機関では、リベラルな校風で知られる学校も含め、ここ数日で憂慮すべき事件が立て続けに起こり、学校側は対処を約束するメールを保護者らに送る事態に迫られている。中には、トイレの壁にトランプ氏陣営のキャッチフレーズ「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」をもじって「米国を再び白人の国に(Make America White Again)」というスローガンが落書きされていたケースもあった。[11]


 このことからもトランプ氏の当選とヘイトクライムの急増が無関係ではないことがわかります。

 そしてSPLCのレポートで紹介されている次の事例は“当選と連動”すると同時に“質的な違い”を端的に示していると言えます。

My 12-year-old daughter is African American. A boy approached her and said, “Now that Trump is president, I’m going to shoot you and all the blacks I can find.” 
(私の12歳の娘はアフリカ系アメリカ人だ。ある男が彼女に近づいて、こう言った「今はトランプが大統領だ。俺はお前や見つけたすべての黒人を撃ち殺すだろう」。)


 この事例が意味するところは「差別扇動を続けるトランプが大統領になった今、俺たちは差別をしてもいい。だから、お前ら黒人を殺す」ということです。次の説で詳しく検討しますが、トランプの当選が、庶民による「殺す」という凶悪なヘイトスピーチ(この場合は既に脅迫という意味ではヘイト「クライム」と言えるが)を正当化する後ろ盾になっているということです。


 グループ別にみると急増したヘイトクライムの中でもムスリムへの差別は深刻だと言えます。ムスリムへのヘイトクライムはトランプ氏が選挙期間中にISなどの過激派と呼ばれるグループの「テロ」の発生と発生時にトランプ氏が攻撃的な論調を強めたこともあり被害が急増しています。

米連邦捜査局(FBI)は14日、昨年ムスリムに対するヘイトクライム件数が過去10年以上で最多となったと発表した。
FBIによれば、2015年に報告されたモスクへの襲撃やムスリムに対するヘイトクライムは257件に上り、前年の154件に対して67%増となった。ムスリムを対象とする事件としては、記録を開始した2001年以来で最多である。2001年は、「9.11」同時多発攻撃の発生以降、480件以上のヘイトクライムが生じていた。

 しかし、ムスリムへの向けられたものも含むこれらのヘイトクライムの数は氷山の一角にすぎないかもしれません。なぜならヘイトクライムは地元警察に通報する人が少ないため現実の実数はさらに多いかもしれないのです。

米司法統計局が実施した近年の調査によれば、2012年にヘイトクライムが29万3800件発生したと推定しており、この数字はFBIデータの約50倍となっている。この調査によって、事件の6割は警察に通報されていないことが判明した。[12]


●当選=差別のGOサイン、「上からの差別煽動」

 これらの現象をどのように見ればいいのでしょうか?

 まず、第1に注目するべき点はトランプ氏が当選したことが差別をすることのGOサインになっているということです。

 ARICでは幾度となく指摘していますが、人種差別撤廃条約の第4条(c)では「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」を求めています。

 (c)項が求められている理由についてはARICのブログや政治家レイシズムデータベースでも言及しています。(http://antiracism-info.com/database_home

 端的に言うと(c)項が求められているのは「一般的に国や行政が行う差別や政治家はじめとした公人によるレイシズムは、市民によるヘイトスピーチよりはるかに強力に、市民社会のレイシズムに正当性を与え、差別煽動効果を発揮する」からです。

 このような政治家による「政治空間」から「上からの差別扇動」は、市民社会に対する差別を扇動します。それは庶民が行う差別煽動に比べて、桁違いの効果を持ちます。

 これまでもトランプ氏は、私人としてではなく、大統領候補と言う立場から「上からの差別扇動」を行ってきたのであり、それによってヘイトクライムが引き起こされてきました。そして、最近ここまで短期間にヘイトクライムの件数が急増したのは、そのトランプ氏が共和党の大統領候補から、アメリカ大統領に当選したということが影響しています。実際にトランプ氏は大統領、つまり国家元首(head of state)かつ行政府の長として、内政、外交、軍事面で広範な権限を与えられている地位になったことで、トランプ氏が行ってきた差別煽動がより一層「正当化」され、効果を飛躍的に高めたと考えられるわけです。

 「上からの差別煽動」に関連して、レイシズム暴力とレイシズムの政治空間への侵入に関してフランスのレイシズム研究者であるミシェル・ヴィヴィオルカは次のように述べています。

 より広い視点から言えば、暴力が増大するかどうかは、偏見や差別といった形態とは異なり、社会全体の条件に左右される。なぜなら水面下で影響を及ぼし、労働や住宅市場において当局に許容される制度的レイシズムとは異なり、暴力は一般社会からの強い批判や、政府や国家の弾圧の対象とされるためである。よって、その暴力が増えるかどうかは、政治制度に強く規定される。したがってマックス・ウェーバーの有名な表現を借りれば、レイシズムの暴力は何よりもまず、正当な暴力行使を独占する国家によって規定されるのである。それゆえ国家は暴力の発生に必然的に関与するし、また国家が暴力にどう対応するかによって、レイシズムの暴力の増大や現象が決まる以上、それに責任を負っている。(『レイシズムの変貌』明石書店、2007年、84〜85頁)

 つまり、レイシズム扇動を続けてきたトランプ氏が大統領に当選する(=行政府の長としての絶大な権限を持つ)ことが市民社会に対して差別のGOサイン(=正当性)を送ったということができます。



 今回はトランプ氏の大統領当選による「上からの差別煽動」とヘイトクライム急増の関係を見てきました。

 もう一度いいます。差別煽動は差別煽動でも、庶民によるものと、政治家によるものとでは、まったく意味が違います。政治家による「上からの差別煽動」こそ、庶民による差別煽動に比べものにならないほど、社会で差別を煽動し、差別を暴力に結びつけてしまうのです。


 ところで、この恐ろしい「上からの差別煽動」は、日本ではどのような効果を及ぼしているのでしょうか? トランプ氏と同じように、日本でも「上からの差別煽動」は社会の差別を煽動しているのではないか? と、問うてみる必要があるはずです。


 結論からいえば、日本でも「上からの差別煽動」が大きな影響を発揮してきました。そしてある意味では、米国以上に強力に「上からの差別煽動」が日本で猛威を振るっているのです。


 この点について、12月14日に一橋大学でARIC緊急企画「世界で台頭するポピュリズム/排外主義と日本」(詳しくはこちら http://antiracism-info.com/archives/127483 )で、考えます。


※次回以降のブログでは、日本での「上からの差別煽動」などについて取り上げます。


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[1]CNNより


[2]政治家らの発言の正確性を評価するウェブサイト「ポリティファクト(PolitiFact)」より http://www.politifact.com/truth-o-meter/statements/2015/nov/23/donald-trump/trump-tweet-blacks-white-homicide-victims/

[3]KKK元幹部が「支持」表明 トランプ氏の対応に非難集中 http://www.cnn.co.jp/usa/35078660.html より

極右・差別団体と政治家の関係については、ARICブログ〔政治家のレイシズム利用〕ケース1 和田政宗 参議院議員 第6回(http://antiracism-info.sblo.jp/article/177451332.html)でも言及しているのでご参照ください。

[4]ドナルド・トランプ氏語録 ─ 止まらない「暴言」の嵐 国際ニュース:AFPBB News http://www.afpbb.com/articles/-/3070334?pid=0

[5]「同性婚は違憲」と主張するトランプ氏、なぜかレインボー・フラッグでLGBT擁護をアピール http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/01/trump-bizarrely-displays-rainbow-flag_n_12744986.html

[6]トランプ氏のツイートに「反ユダヤ的」の批判 騒動の経緯は? http://www.cnn.co.jp/usa/35085427.html

[7]トランプ氏、「中絶した女性に刑罰を」発言 批判受け修正 http://www.cnn.co.jp/usa/35080424.html

[8]その他発言については、トランプ氏の女性蔑視語録「スターなら女はやらせる」「女は35歳まで」国際ニュース:AFPBB News http://www.afpbb.com/articles/-/3103888 より

[9]トランプ氏支持者、黒人に厳しい見方=ロイター/イプソス調査 http://reut.rs/293Lt1q

[10]憎悪や不寛容による行為900件、米大統領選後 権利団体報告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News http://www.afpbb.com/articles/-/3109644

[11]トランプ氏当選後にヘイト急増、学校で「米国を白人の国に」ナチスかぎ十字も 国際ニュース:AFPBB News http://www.afpbb.com/articles/-/3108001?page=2

[12]コラム:米国でヘイトクライム急増、トランプ氏は何をすべきか http://reut.rs/2fNS0yG @Reuters_co_jpさんから

posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 20:40| Comment(0) | レイシズム情勢

2016年11月27日

沖縄「土人」発言(1)「機動隊員によるレイシズムの問題とは」

 今回はここ数週間問題になっている“沖縄「土人」発言”問題について、レイシズムとの関連で考えたいと思います。

1、事件の概要(メディアの報道など)

 まず、事件の概要を振り返ります。

a、ヘリパッド工事について

 現在、沖縄県東村高江地区では米軍専用施設・北部訓練場で、ヘリコプター着陸帯の建設工事が行われています。

 もともとヘリパッド建設工事は1995年の米兵による少女暴行事件をきっかけにした、沖縄の基地負担軽減を目指す1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告において、東村と国頭村をまたぐ沖縄北部訓練場の返還が盛り込まれたことが発端です。返還とともに残った区域に建設されることになったヘリパッドが東村高江地区を取り囲むように図となっており、完成すると騒音や事故の危険から住民の生活が脅かされることになります。

 この工事は2007年から行われていますが、地元、高江地区の住民の根強い反対運動もあり未だに工事が続けられています。高江村は約70世帯150人の集落で、周囲の亜熱帯の照葉樹の山林(「ヤンバルの森」)には様々な固有種・絶滅危惧種の生物が存在しています。(そのためノグチゲラ(国の天然記念物)の営巣時期の3〜6月は作業中断となります。)

 沖縄防衛局は今年(2016年)の7月22日から工事を再開させ、反対運動を押さえ込むために大量の機動隊員を全国から動員し反対は住民を暴力で排除しています。

 実際に現場では抵抗する市民にけが人が出るほど緊迫したものになっています。
高江橋を車で封鎖、座り込み 機動隊が排除、けが人も ヘリパッド反対運動 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース http://ryukyushimpo.jp/news/entry-341732.html

高江ゲート前 市民、夜通し警戒 抗議継続、けが人も - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース http://ryukyushimpo.jp/news/entry-321157.html

 今回の「土人」発言事件はそのような緊迫した現場でおきました。


b、「土人」発言

 「土人」発言は10月18日の午前中に建設に抗議する市民に対して、現場の機動隊員が発言しました。その衝撃的な様子が動画に残されています。
https://www.youtube.com/watch?v=zm6NbNKIayk&feature=youtu.be

 この事件に関していち早く発信したのは高江の現場で抗議をしていた芥川賞作家の目取真俊氏です。目取真氏は18日の自身のブログでこの事件を発信しています。
沖縄県民を「土人」呼ばわりする大阪府警の機動隊員 海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより−目取真俊
http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/93cd24d10a5c21f3dde2c5aac97e2eec

 次の日(10月19日)の朝刊では沖縄の地元紙「琉球新報」と「沖縄タイムス」がこの事件を報じました。
 同日午前9時45分ごろ、目取真さんら市民数人がN1ゲートそばで、沖縄防衛局が市民の出入りを防ぐため設置したフェンス越しに工事用トラックの台数を確認していた。その際、機動隊員3人がフェンスから離れるよう指示した際、1人が「触るなクソ。どこつかんどんじゃボケ。土人が」と発言した。市民側は発言者を大阪府警の機動隊員とみている。機動隊員の発言について、県警は本紙の取材に「現時点で把握していない」としている。
「どこつかんどんじゃボケ。土人が」 機動隊員が沖縄で暴言 ヘリパッド反対の芥川賞作家に|沖縄タイムス+プラス ニュース|沖縄タイムス+プラス http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/67175

 また、18日に別の機動隊員が「だまれ、こら、シナ人」と発言したことも確認されています。

 沖縄県警の調べによるこれらの発言をした機動隊員は二人とも大阪府警から派遣された20代の隊員であり、二人とも事件が起きて即日大阪へ戻っています。

 その後、大阪府警は不適切な発言で警察の信用を失墜させたなどとして、男性巡査部長(29)と男性巡査長(26)をそれぞれ戒告の懲戒処分としました。大阪府警は「県民を侮辱する意図はなかったが、個人的発言が許されない部隊活動での軽率な発言で社会的反響も大きく、厳正に処分した」とコメントしています。
【大阪府警機動隊員の差別的発言】巡査部長ら2人を懲戒処分 大阪府警「県民侮辱の意図ないが軽率な発言、社会的影響」 - 産経ニュース http://www.sankei.com/west/news/161021/wst1610210068-n1.html



2、「土人」発言のもつ意味

 あまりにも衝撃的な映像が残されていた事もありこの問題は大きくニュースで取り上げられました。また、何より「土人」という言葉のわかりやすい差別性もこの事件が大きな社会問題化した事につながったと言えます。

 しかし、その一方で機動隊員がこのような発言をした重大さや深刻さについてはあまり触れられていません。

 今回は機動隊員による「土人」発言そのものをレイシズムの問題として検討したいと思います。


a、人種差別撤廃条約の観点から

 今回、「土人」発言を行ったのは一般の市民ではなく公人たる機動隊員でした。

 一般の市民による差別ではなく、公人が差別を行ったところに、問題の決定的な重要性があります。この「土人」発言は日本も結んでいる人種差別撤廃条約が禁止している「人種差別」(レイシズム)に該当するだけでありません。国・自治体・公務員・政治家など公人の差別を特別に禁止している条約第4条(c)に明白に違反します。
第4条 締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って、特に次のことを行う。
(c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと

 今回の事件のように、この(c)に該当するレイシズムが問題なのは、公人による差別は決定的な社会的影響力を持つからです。具体的には機動隊員という「公人」によるレイシズムは普通の市民が行うレイシズムよりもはるかに強力に市民社会のレイシズムに正当性を与え、差別煽動効果を発揮するからです。(この点はARICの政治家レイシズムデータベースの趣旨文でも言及しています。 http://antiracism-info.com/database_home/message

 このことに関してフランスのレイシズム研究者であるミシェル・ヴィヴィオルカは次のように述べています。
 より広い視点から言えば、暴力が増大するかどうかは、偏見や差別といった形態とは異なり、社会全体の条件に左右される。なぜなら水面下で影響を及ぼし、労働や住宅市場において当局に許容される制度的レイシズムとは異なり、暴力は一般社会からの強い批判や、政府や国家の弾圧の対象とされるためである。よって、その暴力が増えるかどうかは、政治制度に強く規定される。したがってマックス・ウェーバーの有名な表現を借りれば、レイシズムの暴力は何よりもまず、正当な暴力行使を独占する国家によって規定されるのである。それゆえ国家は暴力の発生に必然的に関与するし、また国家が暴力にどう対応するかによって、レイシズムの暴力の増大や現象が決まる以上、それに責任を負っている。(『レイシズムの変貌』明石書店、2007年、84〜85頁)

 つまり、国家がレイシズム暴力を実効的に取り締まるのか、放置するのかによって社会全体におけるレイシズムの作用の仕方が決まってくると言えます。今回のように国家権力である機動隊員が高江の現場で実際に暴力を振るい、レイシズムを行ったことは必然的に社会における沖縄の人たちへのレイシズムを増幅させるといるでしょう。


b、「生きるべきもの/死ぬべきもの」を選別するレイシズム

 今回の「土人」発言で問題なのはただ「国又は地方の公の当局又は機関」が差別をしたという一般的な問題だけではなく、その差別が行われた個別具体的な状況です。

 機動隊員が差別発言をしたのはまさに全国から集められた機動隊員が沖縄の住民を暴力を持って排除するその場所で行われました。

 以前ARICブログ「相模原障がい者殺傷事件をヘイトクライムと考えることの意義」http://antiracism-info.sblo.jp/article/176261876.html で書いた通り、レイシズムは「生きるべきもの/死ぬべきもの」を分断する恐ろしい機能を果たします。

 「思想・世界観としてのレイシズム(人種・民族差別に伴う人種主義)は生物学的発想を伴います。つまりレイシズムは人間を、「ヒト」=人口という生物学的な集団としての「種」ととらえます。そのうえでレイシズムは同じ「ヒト」=人口という種を、「優れた種」「劣った種」などいう下位の「種」=人口に切り分けるのです。これが@人種・民族的集団(と思われてしまう人を含む)へのA不平等というレイシズム(民族差別)と深く結びついているのです。」

 今回のように機動隊員(=国)が暴力を振るう現場では、(沖縄という「他者」への)暴力を正当化するためにレイシズム(抗議するものを「他人種」としてくくり、「人種化された社会」を危機に晒す「病原体」として扱う)が用いられると言えます。

このレイシズムの特徴を沖縄基地問題を撮り続けてきた映画監督の三上知恵氏は自身のブログで的確に言い表しています。
 「中国が攻めてくるという国家の危機を理解せず、国防に非協力的で、自分優先でワーワー言うだけの反対派というグループは、自己中で公共心のない下等な生き物だ。沖縄にはその手が多く、問題だ」と。そんな沖縄県民に対する評価が警察内部で共有されているからこそ、あの機動隊員は悪びれずに暴言を吐いたのだ。
ヒロジさん・文子おばあへの弾圧と土人発言│三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記 | マガジン9 #maga9 http://www.magazine9.jp/article/mikami/30787/
 

 そして今回はそのようなレイシズムが暴力が蔓延する現場で起きました。

 今回の事件を通して沖縄の人々へのレイシズムが増幅するのではないか、高江の現場で今よりもさらにひどい暴力にまで発展するのではないか。それだけが気がかりで仕方ありません。[1]
 

 次回はそもそも「土人」発言が「差別事件」として扱われたのかに関して考えたいと思います。

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[1]実際には11月3日には大阪で「機動隊員を偏向報道から護る」ことを目的としたヘイトデモが行われました。その中にはこれまでARICで批判してきた福岡県行橋市の議員である小坪慎也の姿も確認できました。
posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 10:36| Comment(0) | レイシズム情勢