2016年06月23日

小坪慎也市議「外国人の税制優遇」徹底批判 第4回 小坪慎也市議が根拠に挙げる2013年度会計検査院の検査報告は何を言っているのか?

第四回も引き続き、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチを扱います。
※これまでの記事はこちら。
 第一回「被扶養者の人数が違う「外国人世帯」「日本人世帯」
 第二回「「外国人の税制優遇」シミュレーションの検証
 第三回「外国人は扶養控除を取りやすいのか?

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 前回のブログでは、「外国人に税金を格安にするカラクリがある」という小坪慎也市議の主張を検証した。そして、その結果、小坪慎也市議が市議会議員を務める福岡県行橋市での市県民税の徴収業務では、収入や扶養・被扶養の状況の把握が完全に行えているわけではないこと、それは「日本人」か「外国人」かには全くかかわりがないこと、さらにその原因の一端が自治体の人員削減にあるということを明らかにした。つまり、「外国人」だけが税制上の不正をし放題になっているという小坪市議の主張は、足元の行橋市についても成り立っていなかったのである。

 しかし、小坪慎也市議が「外国人に税金を格安にするカラクリがある」とする自説の正当性を示す強力な証拠として、2014年に会計検査院が行った『日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』*1という検査の報告書を用いている。

 小坪慎也市議はこの報告について、国の会計検査院が「外国人の国外扶養親族について、会計検査院が調査した結果が公表」したものと言い、さらには「扶養控除の申告額が300万以上の外国人(または配偶者)を調査したところ、9割が国外に居住する親族を扶養し、扶養控除を受けていました。また、国外扶養者では、平均10.2人もの扶養をとっていることが発覚しました。このような人数は日本人では不可能です。」と言い切っている(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.132 ll.8−p.133 l.1。太字の強調は引用者)。

 実は、上の小坪議員の引用を太字で強調した箇所はウソだと言ってよい。そもそもこの会計検査院報告は「外国人」のみを対象にしたものでは全くない。

 このことについて論ずるのは次回以降とする。

 その前の作業として、今回はこの会計検査院の検査報告が何を言っているのかを説明したい。


1.会計検査院の検査報告の概要

 会計検査院の報告は、2012年度分の所得税の徴収に関して、確定申告書等での扶養控除の申告額等が300万円以上となっている納税者1,576人について検査したものだ*2。

 そして、所得税で扶養控除が適用される者1,554人*3 についてその国籍をみると、確定申告書等に添付された在留カード等により納税者が外国人〔外国籍〕であることを確認できた者が542人、「日本人と思料される者」が942人(うち、配偶者が外国人であると確認できた者は761人)、不明の者が70人であったという。

 そして、上記1,554人のうち、扶養控除適用額があり、控除の対象となる扶養親族全員の居住国・地域が確認できた納税者は1,426人であった。その9割に当たる1,296人が国外に居住する親族を扶養していたという。上記1,426人の被扶養親族のうち日本国内に居住する親族が1,264人、国外に居住する親族が12,786人の計14,050人であった*4。

 また、国内に居住する親族のみを扶養の対象としている者を「国内扶養者」、それ以外の者(国外に居住する親族を一人でも扶養している者)を「国外扶養者」*5 として、比較した結果として、以下の点を指摘している。

@ 納税者一人当たりの扶養親族の平均人数は、「国内扶養者」は平均5.9人だったのに対し、「国外扶養者」の平均は、10.2人であった*6。

A 納税者の配偶者の兄弟姉妹やおじ・おば、を扶養しているとする者が「国内扶養者」では1.0%だったのに対し、「国外扶養者」では57.6%であった*7。

B 扶養成年層(23歳以上60歳未満の者)である被扶養者は「国内扶養親族」では9.6%だったのに対して、「国外扶養親族」では57.6%であった*8。

C 多数の「国外扶養親族」を扶養控除の対象としていることにより、所得税が課税されていない者が多数見受けられた*9。

D 「国外扶養親族」について、続柄証明書類や送金証明書類が税務署に提出されていなかったり、提出されていても、書類がくわしく書かれていなかったりしていて、被扶養者の存在や送金の実態を税務署が十分に確認できない状況があった*10。

 これらの点は小坪慎也市議が著書『行橋市議会員 小坪しんや』(2016年,青林堂)の中で指摘しているポイントと概ね重複している*11。ただ今回は、会計検査院の検査報告の問題点に的を絞るため、小坪議員の主張の問題については、次回以降検証することにしよう。


2.会計検査院の検査報告の問題点と小坪慎也市議への反論

 上記の検査報告の概要を見てどう思われただろうか? 会計検査院の検査報告の記述だけ見れば、「外国人」は「日本人」と比べて扶養控除をたくさんとっており、その扶養控除が不正なものであると錯覚してしまうかもしれない。だがそれは錯覚だ。

 第一に、そもそもこの会計検査院の検査は、扶養控除の申告額等が300万円以上と多額になっている納税者を対象にしたものであることに注意しよう。外国人を対象に絞ったものでは全くない。

 第二に、その上で「国内扶養者」と「国外扶養者」に分けて様々な点について比較・分析を行っている。だがこの「国内扶養者」と「国外扶養者」とは何か。
 
 じつは「国内扶養者」と「国外扶養者」という用語は、所得税法上に存在しない用語であり、会計検査院が恣意的に設定したカテゴリーである*12。「国内扶養者」とは、「国内扶養親族」のみを扶養控除の対象としている納税者であり、「国外扶養者」とは、「国外扶養親族」も扶養控除の対象としている納税者(国外扶養親族のみを扶養控除の対象としている納税者を含む)だと書いてある。その「国内扶養親族」と「国外扶養親族」という用語も実は所得税法上には存在しないのだが*13、会計検査院の検査報告では、それぞれを「国内に居住する控除対象扶養親族」と「国外に居住する控除対象扶養親族」のことであると書いている*14。

 つまり、「国内扶養者」と「国外扶養者」という用語は、会計検査院の定義に従うならば、単に日本国外に居住している被扶養者がいるかどうかを表すに過ぎない。「国内扶養者」とは、日本国内に居住している者のみを扶養している者を指すのだから、その中には、実は日本に居住する「外国人」(外国籍者及び外国にルーツを持つ者)が含まれる。また、逆に「国外扶養者」とは、それ以外の者(国外に居住する親族を一人でも扶養している者)を指すのだから、留学生の親などかなりの「日本人」や「日本に居住する被扶養親族」が含まれることになることにも気づくだろう。

 前述の通り、小坪慎也市議は、この会計検査院の検査報告は、「外国人の国外扶養親族について」検査した報告書であると述べているが、『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』において、この検査が「外国人」を対象としているとは書かれていない。検査の対象となったのは、あくまで「扶養控除の申告額等が300万円以上と多額になっている納税者1,576人」であり、その中には、「日本人」も「外国人」も含まれている。また「国内扶養者」、「国外扶養者」という用語が、「日本人」「外国人」という国籍や人種・民族の別とは全く無関係なのだ。

 したがってこの報告を使って外国人に特権があるなどと言うことはできないのである。

 この報告にはだが、ほかにも問題がある。

(続く)

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*1『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.132 l.8−p.133 l.1
「私のブログを読まれている方はご存じかと思いますが、外国人の国外扶養親族について、会計検査院が調査した結果が公表されています。会計検査院とは三権から独立した国の機関の一つであり、すべての監査を行います。会計検査院による調査とは、国による調査と言ってもいいでしょう。その結果でありますが、恐るべきものがございます。
 扶養控除の申告額が300万以上の外国人(または配偶者)を調査したところ、9割が国外に居住する親族を扶養し、扶養控除を受けていました。また、国外扶養者では、平均10.2人もの扶養をとっていることが発覚しました。このような人数は日本人では不可能です。」
 小坪慎也市議がブログで紹介しているのは、「平成25年度決算検査報告の概要」、つまり、簡易版の報告である。(小坪しんやのHP〜行橋市議会議員 https://samurai20.jp/2014/10/g-huyou/ より)
 より詳しい検査報告は、会計検査院検査報告データベースを参照。(会計検査院検査報告データベース,平成25年度,第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等, 第3節 特定検査対象に関する検査状況,『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』 http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm

*2 「扶養控除の申告額等が300万以上」となっているため、実際に300万以上の扶養控除が適用されたのかどうかは定かではない。

*3 確定申告書等での扶養控除の申告額等が300万円以上となっている納税者1,576人のうち、扶養控除適用額がない(扶養控除以外の所得控除を適用した時点で課税される所得金額が0円となる)者が22人いた。

*4(『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』, 3 検査の状況,(1) 扶養控除の適用状況,ア 控除対象扶養親族の状況, http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm
「上記扶養控除の申告額等が300万円以上と多額になっている納税者1,576人に係る扶養控除適用額(注3)は、計51億4743万余円であった。このうち、所得税額の計算において扶養控除適用額がない納税者22人を除く1,554人についてその国籍をみると、確定申告書等に添付された在留カード等により納税者が外国人であることを確認できた者が542人、日本人と思料される者が942人、不明の者が70人であった。また、上記の日本人と思料される942人のうち、配偶者が外国人であると確認できた者は761人であった。
(注3)扶養控除適用額  所得金額に扶養控除以外の所得控除を適用したその残額から更に控除できる扶養控除の額
上記1,554人のうち控除対象扶養親族全員の居住国・地域が確認できた納税者1,426人が申告した控除対象扶養親族は、国内扶養親族が1,264人、国外扶養親族が12,786人(居住国・地域別の内訳は、フィリピン共和国8,342人、ブラジル連邦共和国1,330人、中華人民共和国821人、その他の国・地域2,293人である。)の計14,050人であった。
そして、上記1,426人のうち、国内扶養親族のみを扶養控除の対象としている納税者(以下「国内扶養者」という。)は130人であったのに対して、国外扶養親族も扶養控除の対象としている納税者(国外扶養親族のみを扶養控除の対象としている納税者を含む。以下、これらの納税者を「国外扶養者」という。)は1,296人と、全体の9割を占めていた。そして、納税者一人当たりの控除 対象扶養親族の人数についてみると、 図1のとおり、11人以上となっているのは国外扶養者のみであった。また、国内扶養者では平均5.9人であるのに対して、国外扶養者では平均10.2人と多い傾向にあった。」

*5 「国内扶養者」と「国外扶養者」の定義については、本文2.会計検査院の検査報告の問題点を参照。

*6 (『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』, 3 検査の状況,(1) 扶養控除の適用状況,ア 控除対象扶養親族の状況, http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm
「そして、納税者一人当たりの控除対象扶養親族の人数についてみると、図1のとおり、11人以上となっているのは国外扶養者のみであった。また、国内扶養者では平均5.9人であるのに対して、国外扶養者では平均10.2人と多い傾向にあった。」

*7 同上
「また、前記の1,426人が申告した控除対象扶養親族14,050人について納税者との続柄をみると、図2のとおり、納税者の配偶者の兄弟姉妹等である二親等の姻族及び配偶者の叔父、叔母等である三親等の姻族が、国内扶養親族では計13人と国内扶養親族全体の1.0%にとどまっているのに対して、国外扶養親族では計7,368人と国外扶養親族全体の57.6%を占めていた。」

*8 同上
「さらに、上記の控除対象扶養親族14,050人について24年12月31日時点の年齢をみると、一般に我が国では就労していると思料される23歳以上60歳未満の者(以下「扶養成年層」という。)の国内扶養親族又は国外扶養親族全体に占める割合が、図3のとおり、国内扶養親族では9.6%(1,264人中122人)と低いのに対して、国外扶養親族では57.6%(12,786人中7,368人)と高くなっていた。」

*9 (『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』, 4 本院の所見,
http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm
「ア 国外扶養者は、国内扶養者と比較して、納税者一人当たりの控除対象扶養親族の平均人数が多く、納税者からみて二親等の姻族及び三親等の姻族並びに扶養成年層を扶養しているとする者も多数見受けられた。また、多数の国外扶養親族を扶養控除の対象としており、国外扶養控除適用額が多額に上ることにより所得税が課税されていない者が多数見受けられた。」

*10 同上
「イ 国外扶養親族については、続柄証明書類及び送金証明書類が税務署に提出されていなかったり、提出されていても、国内扶養親族の場合と異なり申告した年における控除対象扶養親族の生存の有無及び住所を確認できなかったり、納税者の友人等の第三者を通じるなどして現金を手渡したとしている申立書のみが提出されていて送金の事実を確認できなかったりなどしていて、控除対象扶養親族の要件を満たしているかについて税務署が十分に確認できない状況となっていた。そして、国外扶養控除適用額と比較して、国外扶養親族への送金額が相当下回っており、担税力が減殺された分を相当上回る国外扶養控除適用額になっていると思料される者も多数見受けられた。」

*11 『行橋市議会員 小坪しんや』(2016年,青林堂) p.132 l.7-p.134 l.1 p.145 l.5-p.147 l.10

*12 所得税法 法令データ提供システム http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40HO033.html

*13 2015年の所得税法改正により、所得税法第194条5項で「国外居住親族」という言葉が使われるようになった。この言葉は「国内扶養親族」とほぼ同義である。しかし、所得税会計検査院が『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』という報告書を作った2014年度には、まだこの言葉は所得税法上に存在しなかった。
(財務省, 第189回国会における財務省関連法律,所得税法等の一部を改正する法律案新旧対照表,p.51(ページの上段が改正案、下段が改正前の所得税法である。法案は2015年3月31日に成立。), http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/189diet/st270217s_01-03.pdf

*14 (『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』, 1 検査の背景,(3) 扶養控除の適用手続, http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm
「このため、税務署は、国内に居住する控除対象扶養親族(以下「国内扶養親族」という。)については、必要に応じて、市町村等から国内扶養親族の住民票を取り寄せたり、市町村等が保有する給与支払報告書等を調査したりなどして、控除対象扶養親族の要件を満たしているかを確認している。一方、国外に居住する控除対象扶養親族(以下「国外扶養親族」という。)については、納税者の協力を得て、出生証明書等の控除対象扶養親族の氏名、生年月日、納税者との続柄等を確認できる書類(以下「続柄証明書類」という。)及び送金依頼書等の送金の事実を確認できる書類(以下「送金証明書類」という。)の提出又は提示を求めている。」
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2016年06月15日

小坪慎也市議「外国人の税制優遇」徹底批判 第3回 外国人は扶養控除を取りやすいのか?

第三回も引き続き、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチを扱います。
*第一回はこちら、第二回はこちら

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 前回のブログでは、小坪慎也市議が行った「外国人の税制優遇」のシミュレーションが、単に3人世帯と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」を意図的に抜き出して比較したものにすぎないこと、そしてその比較をするうえでは外国人であるか日本人であるかということは全く関係ないということを証明した。

 もっとも、小坪慎也市議も、
1) 扶養控除が「血族(自分の側)だと6親等、姻族(配偶者側)が3親等」に適用されるという点では「日本人も外国人も分け隔てなく、同じ制度になって」いるということは認めている(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 P.130)。

 そして、
2) そのうえで「外国人に税金を格安にするカラクリがある」と主張している。

 1) について言えば、小坪議員は自ら作成したシミュレーションが、「3人世帯」と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」に他ならないことを、本当は自覚していることになる。これだけで彼のヘイトスピーチが相当に悪質であることは何度でも強調しておきたい。

 さて、今回検証したいのは2) である。小坪慎也市議が主張する「カラクリ」の中身とはなにか。


1.小坪慎也市議が主張する「外国人」の「税金を格安にするカラクリ」とは

 前回のブログでは、小坪慎也市議が行った「外国人の税制優遇」のシミュレーションでの「日本人世帯」と「外国人世帯」との比較は、実際には「3人世帯」と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」との比較であったことを証明した。この「3人世帯+4人の被扶養者」とは、税額を計算した時にちょうど所得税、市県民税が非課税となる最小の被扶養者の人数(小坪市議のシミュレーション仮定に従って計算)となるように、設定したものである。自分が恣意的に異なる扶養人数の家族どうしを比較したシミュレーション結果に、恣意的に「日本人世帯」と「外国人世帯」なるレッテルを貼ることじたいがレイシズムであることを指摘した(前回、前々回)。

 しかしながら、小坪慎也市議は、『行橋市議会員 小坪しんや』(2016年、青林堂)の中で「税金を安くしたいのであれば、扶養親族をどんどん増やしていけば良いのです。しかし、そんなことはできませんし、できるはずもありません。できるのであれば、みんな税金は0円です。国は成り立ちません。しかし、できないのは日本人だけであり、外国人(*1)はできるのです。」と述べている(p.128)。

 どういうことだろうか? 小坪慎也市議の主張をまとめると以下のようになる。

 まず、小坪慎也市議は、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」と述べている(*2)。じつは「二重扶養」という概念が正確に何を指すのか説明がないため不明である。だが、言いたいことを斟酌すれば、要するに日本人であれば税制上不正は不可能である、ということだろう。

 そして、その上で、「外国人」の場合は状況が異なり、国外に居住している親族に関しては、実際にその親族を扶養しているのか日本の役所で把握できないため、扶養控除が取り放題である(不正をやり放題である)と述べる(*3)。

 そしてその「根拠」について小坪慎也市議は次のように指摘している。

@ 「日本人」の場合は住民基本台帳ネットワークで「二重扶養」(*4)のチェックや被扶養者の収入の確認ができている(*5)。だが国外に居住している親族に関しては行えない(*6)。

A 国外に居住している親族への生活費の送金を確認することができない(*7)。


2.小坪慎也市議の主張に対する反論

 そもそも、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」という小坪慎也市議の主張は正しいのだろうか?

 また、@の「「日本人」の場合は住民基本台帳ネットワークで行われている二重扶養のチェックや被扶養者の収入の確認が国外に居住している親族に関しては行えない」ため、不正がし放題となっているという主張は正しいのだろうか?

 それについて、小坪慎也市議が市議会議員を務めている行橋市の税務課市民税係に実際の業務はどうなっているのか問い合わせてみた。税務課市民税係では、市民税と県民税の徴収を担当している(*8)。

 まず、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。」という小坪慎也市議の分について本当なのかどうかを問うた。その回答を要約すると以下のようになる。

 今現在、行橋市の税務課では、住民基本台帳ネットワークを見ることはできない。現在は、行橋市で作っている住民基本台帳と行橋市で現在までに把握できている扶養・被扶養関係の情報のみ(*9)を見て税務の処理を行っている。

 つまり、行橋市に関しては、税務の処理上「住基ネット」を使っていない、というのだ。

 では、実際に「二重扶養」の確認はどのようにして行われているのだろうか?それに関する回答を要約すると以下のようになる。

 「二重扶養」のチェックに関しては、行橋市の外に被扶養者が居住している場合、その自治体(「C市」とする)に対して「C市に住んでいるB氏が行橋市に住んでいるA氏の扶養に入っているが、B氏の収入は被扶養者の要件を満たすのか」を問い合わせる形で照会している。

 しかし、税を申告する際に、確定申告でも源泉徴収でも、書類が詳しく書かれておらず、被扶養者の住所が確認できない場合がある。そうすると、どこの市町村に問い合わせをすればいいのかがわからない。その場合は(実際に扶養していないということが証明できないため)扶養控除を認めることにしている。

 本来なら、被扶養者の住所の確認までするべきだが、データ量がとてつもなく多いので、(行橋市では)そこまでやっていない。


 そしてこうも言っていた。

 現状を正直に言うと、人員削減のため人手不足になっているので、その中で業務を進めるためには、こうするより仕方ない。行橋市全体の市県民税の徴収を行う市民税係では、2011年から2012年にかけて人員が1人削減され、現在では係長も含め8人で業務を行っている。

 つまり、行橋市に関して言えば、日本国内に居住している人々であっても、全ての場合にその収入や扶養・被扶養関係が把握できているわけではなく、実際には被扶養者の存在自体が確認できない場合も多くあるということである。そして重要なことは、その場合には実務上、扶養控除を認めている(実際に本人が扶養していないことが証明できないから)ということだ。

 行橋市の市議会議員である小坪慎也市議がこのことについて知らないということはないと思われる。

 以上のことから見えてくるのは、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」という小坪議員の主張がじつは正確ではない、ということである。これは「外国人」であるか「日本人」であるかは関係がない。

 1)実際には、「日本人」か「外国人」かにかかわらず、そして、国内に居住しているのか国外に居住しているのかにかかわらず、収入や扶養・被扶養の状況の全てを把握できているわけではない。その責任は自治体や国そして人員削減にあっても、「外国人」にはない。

 2)また、「二重扶養のチェック」ができないということは「外国人」が不正を行っているという主張の論拠にはならないことは明白である。仮に「二重扶養のチェック」ができないというなら、それは「外国人」も「日本人」も変わらない。もしそれを理由に扶養控除を廃止せよと主張するならば、「日本人」の扶養控除も廃止しなければなるまい。

 仮に本当に「二重扶養のチェック」を問題にするならば、小坪議員は各自治体の人員削減に異を唱え、公務員の増員を主張しなければならないはずである。それにもかかわらず、小坪慎也市議は、「外国人」が実際には被扶養者に当たらない者を不正に扶養に入れ、「脱税をしている」という印象操作を行っている。これは「外国人は不正を行うものだ」という偏見を流布し、レイシズムを煽動する。市議会員という立場にいる政治家のこのような「主張」を野放しにすることは大変危険である。

 だがまだまだ問題がある。

 じつは小坪議員が「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています」と言っているのだが、この住基ネットには外国人(外国籍者)も3か月未満在留者などを除けば対象としている(*10)。日本国民も外国籍者もともに登録されている住基ネットを根拠にして、なぜ「日本人の場合は」という限定をかけられるのだろうか?

 事情を知っている人であれば誰でも疑問に思うこの点については次回以降書くことにする。

 一方で、小坪市議は、「外国人が不正に扶養控除を多くとっている」ことの証拠として、会計検査院の調査報告書から「数字」をあげている。次回はこの会計検査院の調査報告書について検証したい。

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*1 小坪慎也市議のいう「外国人」とは、外国籍者だけを指しているわけではない。この点は第一回のブログでも指摘したが、とても重要な点である。小坪慎也市議の「外国人」の「税金を格安にするカラクリ」の論理は、海外に親族が居住している親族の生活実態を日本の役所が把握できないということを主要な論拠としている。その論理の中では、「外国人」を海外に被扶養者となる親族が居住している者としているようだが、その条件だけであれば、日本国籍取得者や1年以上海外に居住している留学生などの親族も含まれることになるだろう。また、外国籍であっても、海外に被扶養者となる親族がいない者もいる。それゆえ、「外国人」が「税制優遇を受けている」という主張は筋が通らない。加えて、明らかに日本国籍取得者なども含めた「外国人」という人種・民族集団を指して脱税の容疑者として扱い、「日本人」の敵として提示することはレイシズム以外の何物でもない。そのため、以下の文では、「外国人」という言葉にはカッコをつけて記載する。

*2 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.129 ll.11−13

*3 「はっきり申し上げますが、外国人の本国の親族、つまり国外親族の扶養控除は取り放題なのが実態です。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.130 ll.8−9)
「「厳しくチェック」「不正は不可能」なのは日本国内だけなのです。最大の問題ですが、当たり前のことを書きます。日本の法律が及ぶのは、基本的に日本国内だけです。よって国外に居住する控除対象親族(以降、国外扶養親族)の実態はよくわかりません。他国には他国の法律があり、住基ネットで接続されているわけではありません。収入がいくらあるのか、実際のところはわかりません。生きているか死んでいるか、そもそも本当に存在しているのかどうかもわからないのです。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.128 l.11-p.129 l.3 )

*4 小坪議員のいう「二重扶養」という言葉は所得税法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE096.html)にも所得税法施行令(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE096.html)にも、存在しない。小坪議員がいう「二重扶養」が何であるかは不明であるが、言いたいことを斟酌すれば、同一の親族に送金していることで、複数の人物がそれぞれ重複して扶養控除を取っている状況のことを指すのかもしれない。これは「できない」とされているようだ(国税庁HP,Q5参照,https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

*5 注A参照

*6 「しかし、外国人の親族はどうでしょうか?つまり、日本で働く外国人の「母国の親族」です。当然のことですが、日本において誰かの扶養に入っていることはありません。万が一、誰かの扶養に入っていたとしても、国外の居住者を住基ネットに登録しているわけではないため、二重扶養のチェックも事実上できません。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.129 l.14-p.130 l.3)

*7 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.145 l.5-p.147 l.10

*8 地方税法 第三百十九条 2項 市町村は、個人の市町村民税を賦課し、及び徴収する場合においては、当該個人の道府県民税を併せて賦課し、及び徴収するものとする。

*9 実際に「住民基本台帳」に載っているのは、氏名、生年月日、性別、住所などである(総務省,住民基本台帳等,http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/gaiyou.html)。
では、住民基本台帳と行橋市の住民基本台帳と現在までに把握できている扶養・被扶養関係の情報とはどのように関連付けられているのだろうか?以下が、行橋市の回答の要約である。
 行橋市内に住んでいる住民の扶養・被扶養関係に関しては、税務署への確定申告や会社の給与支払い報告書をもとに収入関係を把握し、その情報が行橋市で作っている住民基本台帳と個人コードによって関連付けられている。しかし、行橋市外に住んでいる被扶養者に関しては、納税者自身の申告や行橋市が現在までに行った他の自治体への照会によって、行橋市で把握できている扶養・被扶養関係の情報のみがのせられている。


*10 総務省,外国人住民に係わる住民基本台帳制度, http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu/
posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 18:21| Comment(0) | 「税制優遇」徹底批判

2016年06月08日

小坪慎也「外国人の税制優遇」徹底批判 第2回 「外国人の税制優遇」シミュレーションの検証

第二回も引き続き、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチを扱います。
※前回はこちら(第1回 被扶養者の人数が違う「外国人世帯」「日本人世帯」

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 前回のブログでは、小坪慎也市議のいう「外国人の税制優遇」とは、単に世帯における扶養家族の人数の違いによって生じる税額の変化(とそれによる保育料の変化)のことに過ぎず、国籍や民族・人種の違いは全く関係ないということを指摘した。また、扶養控除のシミュレーションの説明書きから考えて、小坪慎也市議のいう「日本人世帯」とは3人世帯のことであり、「外国人世帯」とは3人世帯+4名の被扶養者を追加したものだと考えられるとも書いた。小坪慎也市議はこの3人世帯+4名の被扶養者に「外国人世帯」というラベルを貼っているのである。

 現在、小坪慎也市議は「所得税及び住民税シミュレーション」の計算法などの詳細を全く明らかにしておらず、曖昧な説明でごまかしている。そこで、今回は、小坪慎也市議がブログなどで公開しているデータから、彼が行ったであろう税額のシミュレーション方法を説明してみたいと思う。


1. 小坪慎也市議「外国人の税制優遇」シミュレーションを説明しなおしてみると・・・
表@
20150601-table1.png
(小坪しんやのHP〜行橋市市議会員、【外国人の扶養控除】陳情時に持っていくもの(印刷物一覧)、3-2添付資料1
https://drive.google.com/file/d/0B8BIjQLKlyA2RHJQQjRZMy1KSmc/view

 表@は小坪慎也市議が「外国人の税制優遇」の「証明」に使ったシミュレーションである。

 前回のブログでも、小坪議員作成のこの表の説明が極めて不親切かつ不十分であることを指摘した。「日本人世帯」と「外国人世帯」がいったい何人で構成されているかが酷くわかりにくい。それだけでなく所得税・保育料の額が表のようになる根拠についての細かい説明もない。

 前回のブログでは、小坪慎也市議の表の説明書きに家族構成は「夫、妻、子1人(3歳児未満:扶養控除対象外)」と明記されていることから、小坪慎也市議の言う「日本人世帯」も「外国人世帯」も両方同じ3人世帯であるということを一応仮定した。その上で、「外国人世帯」とは3人世帯+4名の被扶養者を追加したものだと考えられると書いた。

 今回はそう考えられる根拠について、小坪議員が開示しているデータを基に説明してみたい。そして丁寧に小坪議員のシミュレーションを繙いてみると、じつは3人世帯と「7人世帯」(夫・妻・子に+被扶養者4名)を比較しても成立することがわかる。つまり小坪議員のシミュレーションは人数の異なる世帯を比較しているのと全く結果が変わらない。これは「日本人世帯」「外国人世帯」の比較では全くないと言ってよいのである。


 では、シミュレーションの解説に移ろう。

 小坪慎也市議が「日本人世帯」としている3人世帯に扶養家族を一人ずつ追加していった時の税額のシミュレーションをARICで作成した。それが表Aである。

表A
table2.png

 扶養控除の金額は、じつは扶養される家族の年齢によって上下する。計算が煩雑になってしまうため、表Aのシミュレーションでは、すべての扶養家族を一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)であるとして計算した。また行橋市の場合、保育料が市県民税額に応じて決定され(http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2015041900019/files/hoikuryou.pdf)、所得が低い世帯ほど保育料の負担が軽減される制度となっている(表Aの計算式とその結果については記事末尾に掲載するので参照されたい)。

 表Aでは、被扶養者4名以上(同じ条件なら生計を同じくする7人世帯以上と言い換えてもよい)で、所得税・市県民税非課税となるという結果になっている。細かいことをいえば、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)など控除額が高い親族を1人以上養っている場合は3人世帯+3人の被扶養者でも所得税・住民税非課税となることがある(所得控除の額は表B参照)。

 実際、小坪慎也市議はJAPANISMに寄稿した大変わかりにくい記事では3人世帯+3人の被扶養者(「6人世帯」(被扶養者5人+子1人)でも同じ)でも所得税・住民税が非課税となるという説明をしている。((小坪慎也市議HPより、JAPANISM 2014 vol.22「やっぱりあった!「外国人への税制優遇」、
https://drive.google.com/file/d/0B8BIjQLKlyA2ckRGYzBya1ZrNEE/view)この記事についての検証は、所得税のシミュレーションを参照。)

 また、小坪慎也市議は、「外国人世帯」を、3人世帯+国外に居住する4人の被扶養者を追加したものと考えているようだ。ARICが作成した表Aでは、それに合わせて、「3人世帯+◯人の被扶養者」という書き方を採用した。

 だが、「直系の同居老親等」の扶養控除を除けば、生計を一にする場合の扶養控除による税の控除額は、被扶養者が世帯主と同居していようと別居していようと全く変わることはない(表B参照)。したがってARIC作成の表Aのシミュレーションの「3人世帯+4人の被扶養者」は、簡単に「7人世帯」としても(7人が同居している世帯)同様の結果となる。

表B
20150601-table3.png

 ここから次のことがいえる。

 第一に、小坪議員のシミュレーションでラベリングされている「日本人世帯」「外国人世帯」とは、「3人世帯」と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは単に「7人世帯」のことにすぎない(被扶養者が「一般の控除対象扶養親族」である場合)。日本人であるか外国人であるかは全く無関係である。

 第二に、同じことであるが被扶養者が世帯主と同居していても別居していても同じである。だから被扶養者が国内にいようと国外にいようと全く無関係である。なおさら日本人であるか外国人であるかは関係ない。


 もういちど表Aのシミュレーションを見てみよう。小坪慎也市議がちょうど所得税、市県民税が非課税となる「3人世帯+4人以上の被扶養者」(あるいは「7人世帯」)を取り上げて「外国人世帯」とラベルを貼っていたことがわかる。この表を元に小坪議員の作成したシミュレーションを修正すると表Cのようになる。

表C
table4.png


2.税額の詳しい計算法

 以下、税額を計算するときの詳しい計算方法を説明する。

○所得額のシミュレーション

 所得の金額は、給与収入の金額から給与所得控除額を差し引いて算出する。小坪慎也市議の「外国人の税制優遇」のシミュレーションでは、収入が「311万円5千円」となっている。この場合、給与取得控除の額は、所得税も市県民税も同じく以下の式で算出する。
 収入金額×30%+180,000円

 所得の金額を計算すると以下のようになる。

 ・給与取得控除
 →311万5000円×30%+18万円=111万4500円
 ・所得の金額
 →311万5000円−111万4500円=200万500円

 小坪慎也市議のシミュレーションは、年間所得を200万円として計算したものだが、実際の年間所得は200万500円である。しかし、以下の税額のシミュレーションは、小坪慎也市議が行ったであろう税額の算出方法を説明するという目的で行うため、年間所得を200万円として計算している。

・所得税のシミュレーション

 所得税は、国に納められる税金で、その税額は課税所得の5%となる。3人の世帯(夫、妻、子1人)では、基礎控除・配偶者控除を合わせて76万円(38万円×2)が所得から控除され、残りの124万円に課税される。扶養家族が増えて行くと、その分だけ扶養控除額が大きくなり、課税される所得額は少なくなっていく。3人世帯に4人の被扶養者を追加すると、基礎控除・配偶者控除・扶養控除を合わせて最低でも228万円(38万円×6)が所得から控除されることになり、課税所得は0円となる。(所得控除額は表C参照)

 所得税を計算すると以下のようになる。

 ・3人世帯
 →(200万円−38万円×2)×5%=6万2000円
 ・3人世帯+4人の被扶養者
 →(200万円−38万円×6)×5%=−1万4000円(マイナスなので税額は0円)

 所得控除の制度では、本来、表Bのように基礎控除・配偶者控除・配偶者控除をそれぞれ別の制度として扱っている。しかし、小坪議員の説明ではそれらを全て「扶養控除」として扱ってしまっており、控除される額は同じではあるが、単に間違いである。

○市県民税のシミュレーション

 市県民税のシミュレーションでは、所得税よりも少々ややこしい計算が必要となる。住民税には、住民に均等の額で課税される均等割と、所得の額に応じて課税される所得割がある。(行橋市HP、住民税とは、
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013112000194/

 このサイトをみると前年度の所得が以下の計算式の金額以下の場合は「均等割も所得割も課税されない人」(つまり非課税となる人)となる。
 315,000円×(控除対象配偶者+扶養親族数+本人)+189,000円

 シミュレーションでいう3人世帯+4人の被扶養者の世帯の場合、

 315,000円×(1名(妻)+4名(扶養親族)+1名(本人)+189,000円
=315,000円×6名+189,000円
=1,890,000円+189,000円
=207万9000円

 となる。つまりシミュレーションで仮定された3人世帯+4名の被扶養者(「7人世帯」も同じ)の場合、前年度の年所得207万9000円以下であれば非課税となる。そしてシミュレーションでは年所得が200万円に仮定されていた(前年度の所得が200万円であることも仮定すべきであるが小坪議員はその旨を明記しておらず、大変不親切である)。これではこのモデルが非課税となるのは当たり前だ。というより、非課税になるようにこのモデル(つまり小坪議員の言う「外国人世帯」)はあえてつくられているわけである。

 他方の3人世帯ではどうなるか。

 まず均等割は年額で4500円である(小坪慎也市議がシミュレーション表を用いて議会で質問を行った2013年12月時点での行橋市の均等割は市民税3,000 円 県民税1,500 円で年額4500円となる。(市報ゆくはし2014年5月1日号 7項
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2015010700060/files/20140501.pdf))。

 次に所得割はどうか。

 3人の世帯(夫、妻、子1人)の場合、基礎控除・配偶者控除として66万円が所得から控除され(先の所得税の控除は76万円)、134万円に課税される。

 この134万円から「調整控除」を引いた額が所得割となる。注意深い読者なら、先の所得税(国税)計算時の控除額と、この市県民税の控除額に差があることに気づかれたと思う。調整控除とは2007年のこの差(国税である所得税の控除額のほうが市県民税である住民税の控除額より多い)によって生じる市県民税の負担増を調整するための控除である(行橋市HP、住民税とは、
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013112000194/)。

 シミュレーションの「3人世帯」は「合計課税所得金額」が200万円以下なので、調整控除額は両方とも次の計算式に従う。

 アまたはイのいずれか少ない金額の5%(県民税2%、市民税3%)
 ア 人的控除額の差の合計額
 イ 合計課税所得金額


 「3人世帯」の場合、

 アは基礎控除5万円 と配偶者控除(一般)5万円の合計10万円
 イは前述の134万円
⇒ 10万円×5%=5000円である。

 以上より、市県民税を計算すると以下のようになる。

 ・3人世帯
 均等割→4500円
 所得割→(200万円−66万円)×10%−5000円=12万9000円
 市県民税(均等割+所得割)→4500円+12万9000円=13万3500円
 ・3人世帯+4人の被扶養者は非課税(前述)

○保育料のシミュレーション

 行橋市の保育料は、市県民税の所得割の額によって異なる。行橋市が公開している保育料の表から計算すると、以下のようになる。(行橋市HP、平成28年度保育料について、
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2015041900019/files/hoikuryou.pdf

 ・3人世帯
 →所得割12万9000円
 →保育料 月額3万5600円(年額42万7200円)
 ・3人世帯+4人の被扶養者
 →所得割 非課税(0円)
 →保育料 月額9000円(年額10万8000円)


3.まとめ

 以上のような計算から、小坪慎也市議が行った「外国人の税制優遇」なるシミュレーション結果は、第一に、単に3人世帯と3人世帯+4人の被扶養者あるいは「7人世帯」を意図的に抜き出して比較しているだけであることが証明された。

 そして第二に、その3人世帯+4人の被扶養者あるいは「7人世帯」とは(小坪議員のいう「外国人世帯」とは)、計算上必ず市県民税と所得税が非課税(ゼロ円)になる人数として設定されていることがわかる。

 さらに第三に、小坪議員のシミュレーションなるものは、外国人と日本人という国籍や民族/人種とは一切何の関係もないことが証明された。日本の国と自治体双方の税制上、扶養親族の数が異なれば税額が異なるという自明の事実を小坪議員は単に確認しただけである。さらにこのことは扶養親族が世帯主と同居していようと別居していようと関係が無いことであり、さらに別居している場合でも国内に居住していようと国外に居住していようと何の関係もない

 念のために例を挙げて言えば、全員が日本国籍で日本国内に居住し同居した7人世帯(夫・妻・子+4名の扶養親族)の場合、小坪議員のいう「外国人世帯」と同じ結果になる。逆に全員が外国籍の3人世帯でも小坪議員のいう「日本人世帯」と同じ結果となる。小坪議員がこのことに気づいていないはずはないと思われる。

 第四にそれにもかかわらず、小坪議員は3人世帯に「日本人世帯」というラベルを、3人世帯+4人世帯あるいは「7人世帯」に「外国人世帯」というラベルを全く恣意的に貼り付けていることがわかる

 これはレイシズムでなくて何だろうか。小坪慎也市議はこのようなお粗末極まりないシミュレーション表の操作をすることで、「外国人の税制優遇」というデマをセンセーショナルに打ち出し、レイシズムを広く扇動している。そして恐ろしいことに小坪議員のブログは政治系の人気ブログランキングでもかなり上位を維持している。6月7日現在、14位である。(http://blog.with2.net/site/?id=1663149)小坪慎也市議のデマは多くの支持者によって拡散されているのである。

 本ブログでは、今後も引き続き、小坪慎也市議のヘイトスピーチを取り上げ、その主張を徹底的に批判・検証していく。

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※表Aの計算式および結果

1.3人世帯
○所得額→200万円

○所得税額
所得控除額→38万円×2=76万円 (基礎控除、配偶者控除)
課税所得額→200万円−76万円=124万円
所得税額→124万円×5%=6万2000円

○市県民税
均等割→4500円
所得控除額→33万円×2=66万円 (基礎控除、配偶者控除)
課税所得額→200万円−66万円=134万円
調整控除額
 →「人的控除額の差の合計額」または「合計課税所得金額」のいずれか少ない金額の5%
 人的控除額の差の合計額→5万円×2=10万円 (基礎控除、配偶者控除)
 合計課税所得金額→134万円
 →人的控除額の差の合計の方が小さい
 →10万円×5%=5000円
所得割→(200万円−66万円)×10%−5000円=12万9000円
市県民税 (均等割+所得割)
 4500円+12万9000円=13万3500円

○保育料
 →3歳未満児で所得割12万9000円
月額 3万5600円 (年額 42万7200円)

○合計額
→62万2700円


2.3人世帯+1人の被扶養者
○所得額→200万円

○所得税額
所得控除額→38万円×3=114万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×1)
課税所得額→200万円−114万円=86万円
所得税額→86万円×5%=4万3000円

○市県民税
均等割→4500円
所得控除額→33万円×3=99万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×1)
課税所得額→200万円−99万円=101万円
調整控除額
 人的控除額の差の合計額→5万円×3=15万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×1)
 合計課税所得金額→101万円
 →人的控除額の差の合計の方が小さい
 →15万円×5%=7500円
所得割→(200万円−99万円)×10%−7500円=10万1000円‐7500円=9万3500円
市県民税 (均等割+所得割)
 4500円+9万3500円=9万8000円

○保育料
 →3歳未満児で所得割9万3500円
月額 2万8,200円 (年額 33万8400円)

○合計額
→47万9400円


3.3人世帯+2人の被扶養者
○所得額→200万円

○所得税額
所得控除額→38万円×4=152万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×2)
課税所得額→200万円−152万円=48万円
所得税額→48万円×5%=2万4000円

○市県民税
均等割→4500円
所得控除額→33万円×4=132万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×2)
課税所得額→200万円−132万円=68万円
調整控除額
 人的控除額の差の合計額→5万円×4=20万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×2)
 合計課税所得金額→68万円
 →人的控除額の差の合計の方が小さい
 →20万円×5%=1万円
所得割→(200万円−132万円)×10%−1万円=5万8000円
市県民税 (均等割+所得割)
 4500円+5万8000円=6万2500円

○保育料
 →3歳未満児で所得割5万8000円
月額 2万4500円 (年額 29万4000円)

○合計額
→38万0500円


3.3人世帯+3人の被扶養者
○所得額→200万円

○所得税額
所得控除額→38万円×5=190万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×3)
課税所得額→200万円−190万円=10万円
所得税額→10万円×5%=5000円

○市県民税
均等割 4500円
所得割
 →「前年中の総所得金額等の合計額が、次の算式で求めた額以下の人」は所得割が課税されない
 (http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013112000194/
 350,000円×(控除対象配偶者+扶養親族数+本人)+320,000円
 →35万円×5+32万円=207万円
 →所得額は200万円なので、所得割は0円
市県民税 (均等割+所得割)
 4500円+0円=4500円

○保育料
 →3歳未満児で所得割0円
月額 1万3700円 (年額 16万4400円)

○合計額
→17万3900円


4.3人世帯+4人の被扶養者
○所得額→200万円

○所得税額
所得控除額→38万円×6=228万円 (基礎控除、配偶者控除、扶養控除×4)
課税所得額→200万円−228万円=−28万円 (マイナスなので0円)
所得税額→0万円×5%=0円

○市県民税
 →前年度の所得が以下の式の金額以下の場合は均等割・所得割非課税
 (http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013112000194/
 315,000円×(控除対象配偶者+扶養親族数+本人)+189,000円
    =31万5000円×6+18万9000円 
    =207万9000円
 →市県民税は0円

○保育料  →3歳未満児で非課税世帯
 月額 9000円 (年額 10万8000円)

○合計額
→10万8000円
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