2016年07月07日

小坪慎也市議「外国人への税制優遇」徹底批判 第6回 会計検査院の検査報告の検証3

第六回も引き続き、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチを扱います。
※これまでの記事はこちら。
 第一回「被扶養者の人数が違う「外国人世帯」「日本人世帯」
 第二回「「外国人の税制優遇」シミュレーションの検証
 第三回「外国人は扶養控除を取りやすいのか?
 第四回「小坪慎也市議が根拠に挙げる2013年度会計検査院の検査報告は何を言っているのか?
 第五回「会計検査院の検査報告の検証2 「外国人」には扶養親族が多いのか?

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 前回のブログでは、『日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』という検査の報告書の問題点を概括し、その報告書自体がレイシズム煽動効果を発揮しかねない性質を持つことを明らかにした。

 今回は、同報告書にある「国内扶養者」と「国外扶養者」、そして「国内扶養親族」と「国外扶養親族」との比較結果について検証していきたい。


1.会計検査院の報告書の概要
                          
 「国内扶養親族」と「国外扶養親族」との比較結果については、以前5つにまとめたが、今日取り上げたいのはその最初の2点である。

@ 納税者一人当たりの扶養親族の平均人数は、「国内扶養者」が平均5.9人だったのに対し、「国外扶養者」は平均10.2人であった*1 。

A 被扶養親族のうち、二親等及び三親等の姻族(配偶者の兄弟姉妹やおじ・おば)が「国内扶養親族」では1.0%だったのに対し、「国外扶養親族」では57.6%であった*2 。

 上記の点は、行橋市市議会議員である小坪慎也市議が著書『行橋市議会議員 小坪しんや』(2016年,青林堂)や自身のブログで外国人の税制優遇について強調している部分とほぼ重なっている。


2.会計検査院の検査報告の問題点

(1)「国内扶養者」・「国外扶養者」とは

 第四回のブログでも書いたが、「国内扶養親族」と「国外扶養親族」という用語は、それぞれ「国内に居住する控除対象扶養親族」と「国外に居住する控除対象扶養親族」のことである。これらは、単に被扶養者の居住地が国内か国外かを表す者であり、被扶養者の国籍や人種/民族の別とは無関係である。(ブログ第4回 2.を参照)


(2)「国外扶養者」の平均10.2人の扶養親族は多すぎるのか

 上記の検査報告では「@納税者一人当たりの扶養親族の平均人数は、「国内扶養者」が平均5.9人だったのに対し、「国外扶養者」は平均10.2人であった。」という趣旨の記述がある。これだけ見れば、「外国人」は「日本人」と比べて扶養控除をたくさんとっており、その扶養控除が不正なものであると錯覚してしまうかもしれない。実際にこの検査報告を引用した小坪慎也市議もそのように読めるような内容を述べている*3 。

図1 控除対象扶養親族の続柄別の人数
20160707.jpg
(『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』3 検査の状況,(1) 扶養控除の適用状況,ア 控除対象扶養親族の状況より)

 しかし、先ほども述べた通り、「国内扶養者」・「国外扶養者」という用語は「日本人」/「外国人」という国籍や人種/民族の別とは無関係である。上記の「「国内扶養者」が平均5.9人」、「国外扶養者」は平均10.2人」という数字は、「日本人」と「外国人」の扶養親族の平均人数を表しているわけではないのだ。

 次にそもそも、この会計検査院の検査対象となっている「扶養控除の申告額等が300万円以上の納税者」とは、どういう人々なのかを考えてみよう。

 第一回、第二回のブログで説明した通り、日本の所得税の制度では、一般の扶養控除対象親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)一人当たりの控除額が38万円となっている(たとえばブログ第1回の表2を参照)。すべての被扶養者を一般の扶養控除対象親族だと仮定すれば、扶養控除の申告額等が300万円以上になるのは、一般の扶養控除対象親族で8名以上の扶養控除を申請しているという場合であると言える*4 。つまり、「扶養控除の申告額等が300万円以上の納税者」を検査対象となっているということは、もともと、扶養親族の人数が比較的多い人が対象となっているということだ。

 要するに、この会計検査院の検査は、そもそも、
@扶養者が多いほど控除が多くなるという税制システムがある上で、
A「扶養控除の申告額等が300万円以上の納税者」を対象にしている以上、
B検査対象とされた者の扶養家族が多いという結果が出てくるのは当たり前である。それを何かの「発見」であるかのように大騒ぎすることじたい愚劣である。

 そして前述の通り、扶養控除の申告額などが300万円以上=「一般の扶養控除対象親族で8名以上の扶養控除」なのだから、「国外扶養者」1名当たりの控除対象扶養親族の人数が平均10.2人という数字は、特別に多いとまでは言えないだろう。

 (また他方で「国内扶養者」が平均5.9人の扶養控除申請しかしていないのはなぜだろうか?(「一般の扶養控除対象親族で8名以上の扶養控除」を基準とするとこれも乖離がある。)平均5.9人の扶養で扶養控除額が300万円を超えるということから言えるのは、「国内扶養者」の中には日本国内に住む特定扶養親族(年齢が19歳以上23歳未満の人)や同居の老人扶養親族(満70歳以上の人)など、扶養控除額が多額になる被扶養者を多数抱えている人々が多数含まれるということだ。そして、この特定扶養親族や同居の老人扶養親族には、当然「日本人(日本国籍者)」も「外国人(外国籍者)」も含まれる。)


(3)「国外扶養親族」に納税者の配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばが多いということは何を意味するのか?

 会計検査院の報告書では、「国外扶養者は、(中略)納税者からみて二親等の姻族及び三親等の姻族並びに扶養成年層を扶養しているとする者も多数見受けられた。」ということを指摘している。具体的には、A被扶養親族のうち、二親等及び三親等の姻族(配偶者の兄弟姉妹やおじ・おば)が「国内扶養親族」では1.0%だったのに対し、「国外扶養親族」では57.6%であった。この点は会計検査院としては特に何か指摘しているわけではない。だが、配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばを扶養するということは日本国内ではあまり見られず多数の配偶者の親族の扶養控除を取っているのは「不自然で」「不正の可能性がある」というレイシズム煽動に利用される可能性があり、実際に小坪慎也市議も上記の情報を「外国人の税制優遇」の証拠として挙げている*5 。

図1 控除対象扶養親族の続柄別の人数(再掲)
20160707.jpg
(『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』3 検査の状況,(1) 扶養控除の適用状況,ア 控除対象扶養親族の状況より)

 ここで指摘できるのは、まず、第一に、「外国人」が扶養控除をたくさん取っているわけではないということだ(このことについては既にブログで何度も書いたが一応繰り返す)。

 配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばが「国外扶養親族」の57.6%を占めていたという情報から言えるのは、調査対象となっている「国外扶養者」の配偶者の親族に外国に居住している者が多いということだ。しかし、そのことは、その配偶者が「外国人(外国籍もしくは外国にルーツを持つ人)」であることを意味しているわけではなければ、納税者本人が「外国人」であることを意味しているわけでもない。先ほど述べた通り、「国外扶養親族」という用語は、単に「国外に居住する控除対象扶養親族」という意味なのだから、留学生などの「日本人(日本国籍者)」も含まれる。そして、「国外扶養者」の配偶者には、留学生の親などの「日本人(日本国籍者)なども含まれる。また、納税者の国籍とその配偶者の国籍は必ずしも一致しないため、その配偶者が「外国人(外国籍者)」であっても、納税者本人が「日本人(日本国籍者)」であることは十分にあり得るのだ。前回も強調したが、会計検査院の検査対象の納税者の6割はあくまでも「日本人と思慮される者」なのである。

 第二に、配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばを多く扶養しているということは不正の証拠にはならない。

 日本の所得税は、あくまでも「生計を一にしているかどうか」を基準にして徴収される。そのため、実際に親族が被扶養者の要件を満たし、送金を行い、扶養控除の申請をしているのであれば、配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばの扶養控除を取ることは正当な権利だ。また、国外の親族が被扶養者の要件を満たしているのであれば、その親族を扶養することによって、扶養控除を受けるのは、日本の税制上ごく正当なことである。

 「配偶者の兄弟姉妹やおじ・おばを多く扶養しているということは不自然だ」、「外国人は不正をしているのではないか」と思い込むことはレイシズムである。


(4)小坪慎也市議の主張する「日本人への結婚差別」とは

 また、「国外扶養者は、(中略)納税者からみて二親等の姻族及び三親等の姻族並びに扶養成年層を扶養しているとする者も多数見受けられた。」という会計検査院の主張は、小坪慎也市議の主張する「結婚差別」とも関わっている。最後にそれに触れておきたい。

 小坪慎也市議の主張は次の通りである。いわく、「日本人」は、「外国人」と婚姻関係を結んだ場合には、その配偶者の国外に居住する親族の扶養控除を大量にとることができる。しかし、配偶者が「日本人」の場合は「二重扶養のチェック」などが徹底的に行われているため、扶養控除を大量にとることはできない。つまり、「外国人の税制優遇」があるせいで、「日本人」と結婚とするよりも「外国人」と結婚する方が税制上「得」だということになり、「日本人」が結婚差別をうけることになる、というのだ*6 。

 まず、人は税金が安くなるか否かによって(結婚じたいではなく)誰を配偶者とするかを決めるはずだという発想じたいが極めて非人間的なホモエコノミクス的発想である、ということは指摘しておきたい。

 前回のブログで取り上げたとおり、会計検査院の報告で不正の可能性がある事例としてあげられていたのは、「日本人」の納税者であったことは思い出しておく必要がある(ブログ第5回 2.(2)を参照)。

 既に繰り返している通り、日本の税制上「日本人」であるか「外国人」であるかで違いはない。つまり、「外国人」だけが、税制上の優遇を受けているというのは、ウソである。ましてそれが「日本人への結婚差別」を招くなどあり得ないのである。

 なお、実際には日本社会では外国人への結婚差別が深刻である。実際に、兵庫県宝塚市の佐藤基裕市議が当時の恋人が在日韓国人であることを理由に婚約を破棄したことは有名だ*7 。

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*1 『第2 日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について』, 3 検査の状況,(1) 扶養控除の適用状況,ア 控除対象扶養親族の状況,http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-1068-0.htm
「そして、納税者一人当たりの控除対象扶養親族の人数についてみると、図1のとおり、11人以上となっているのは国外扶養者のみであった。また、国内扶養者では平均5.9人であるのに対して、国外扶養者では平均10.2人と多い傾向にあった。」

*2 同上
「また、前記の1,426人が申告した控除対象扶養親族14,050人について納税者との続柄をみると、図2のとおり、納税者の配偶者の兄弟姉妹等である二親等の姻族及び配偶者の叔父、叔母等である三親等の姻族が、国内扶養親族では計13人と国内扶養親族全体の1.0%にとどまっているのに対して、国外扶養親族では計7,368人と国外扶養親族全体の57.6%を占めていた。」

*3 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.132 ll.8−p.133 l.1
「私のブログを読まれている方はご存じかと思いますが、外国人の国外扶養親族について、会計検査院が調査した結果が公表されています。
〔中略〕扶養控除の申告額が300万以上の外国人(または配偶者)を調査したところ、9割が国外に居住する親族を扶養し、扶養控除を受けていました。また、国外扶養者では、平均10.2人もの扶養をとっていることが発覚しました。このような人数は日本人では不可能です。」
 小坪慎也市議は、「扶養控除の申告額が300万以上の外国人(または配偶者)を調査したところ」と書いているが、この会計検査院の検査は、「(確定申告書での)扶養控除の申告額等が300万円以上となっている納税者」について行われた者であり、外国人を対象にしたものではない。実際に検査対象の6割が「日本人(日本国籍者)」である。
 また、小坪慎也市議は、「外国人の国外扶養親族について、会計検査院が調査した結果が公表されています。」というように「国外扶養親族」とは「外国人の親族」だと読めるような書き方をしている。しかし、「国外扶養親族」とは、単に国外に居住している被扶養者のことであり、その中には「日本人(日本国籍者)」も含まれる。そして、その扶養者にも「日本人(日本国籍者)」が含まれる。
 小坪慎也市議は、最後に「このような人数は日本人では不可能です。」と付け加えているが、この検査自体は「外国人」や「日本人」を対象におこなわれたものではないので、そういえる根拠はどこにもない。

*4 実際には、扶養控除の額は、被扶養者の年齢などによって変わる。
 すべて一般の扶養親族だと仮定した場合、8名以上の扶養控除を申告した場合にのみ扶養控除の合計額が、300万円を超える(基礎控除(納税者本人の分の控除)、配偶者控除、扶養控除はそれぞれ別の制度であるため、納税者本人とその配偶者は、扶養親族の人数に含めていない)。
 38万円×8名=304万円
 詳しくは、第一回、第二回のブログ参照。

*5 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.133 ll.2−6
「また、「配偶者の兄弟姉妹、もしくは本人の叔父・叔母等」ですが、国内扶養者では1・0%でしたが、国外扶養親族の場合は57・6%を占めていました。置き換えて考えて頂きたいのですが、嫁の兄弟姉妹を養っている方は多くはいないでしょう。また叔父や叔母まで養っている方はどれほどいるでしょう。日本国内だと1・0%ですが、国外扶養親族だと約6割です。60倍という数字はおかしくないでしょうか。」
 なお、小坪慎也市議は「配偶者の兄弟姉妹、もしくは本人の叔父・叔母等」が国外扶養親族の場合は57・6%と書いているが、これは誤りである。実際は「納税者の配偶者の兄弟姉妹等である二親等の姻族及び配偶者の叔父、叔母等である三親等の姻族」である。(注*2を参照)

*6 小坪しんやのHP〜行橋市議会議員,【拡散】漫画でわかる外国人特権A~日本人への結婚差別
https://samurai20.jp/2015/09/relateddocuments3/

*7 宝塚市議会会議録 平成25年第 1回定例会−02月21日-01号
http://takarazuka.gijiroku.com/voices/cgi/平成25年第1回定例会−02月21日-01号
産経WEST 在日韓国人差別か、政治的信条か…婚約破棄めぐる訴訟の行方は
http://www.sankei.com/west/news/130302/wst1303020062-n1.html

posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 18:16| Comment(0) | 「税制優遇」徹底批判
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