2016年06月15日

小坪慎也市議「外国人の税制優遇」徹底批判 第3回 外国人は扶養控除を取りやすいのか?

第三回も引き続き、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチを扱います。
*第一回はこちら、第二回はこちら

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 前回のブログでは、小坪慎也市議が行った「外国人の税制優遇」のシミュレーションが、単に3人世帯と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」を意図的に抜き出して比較したものにすぎないこと、そしてその比較をするうえでは外国人であるか日本人であるかということは全く関係ないということを証明した。

 もっとも、小坪慎也市議も、
1) 扶養控除が「血族(自分の側)だと6親等、姻族(配偶者側)が3親等」に適用されるという点では「日本人も外国人も分け隔てなく、同じ制度になって」いるということは認めている(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 P.130)。

 そして、
2) そのうえで「外国人に税金を格安にするカラクリがある」と主張している。

 1) について言えば、小坪議員は自ら作成したシミュレーションが、「3人世帯」と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」に他ならないことを、本当は自覚していることになる。これだけで彼のヘイトスピーチが相当に悪質であることは何度でも強調しておきたい。

 さて、今回検証したいのは2) である。小坪慎也市議が主張する「カラクリ」の中身とはなにか。


1.小坪慎也市議が主張する「外国人」の「税金を格安にするカラクリ」とは

 前回のブログでは、小坪慎也市議が行った「外国人の税制優遇」のシミュレーションでの「日本人世帯」と「外国人世帯」との比較は、実際には「3人世帯」と「3人世帯+4人の被扶養者」あるいは「7人世帯」との比較であったことを証明した。この「3人世帯+4人の被扶養者」とは、税額を計算した時にちょうど所得税、市県民税が非課税となる最小の被扶養者の人数(小坪市議のシミュレーション仮定に従って計算)となるように、設定したものである。自分が恣意的に異なる扶養人数の家族どうしを比較したシミュレーション結果に、恣意的に「日本人世帯」と「外国人世帯」なるレッテルを貼ることじたいがレイシズムであることを指摘した(前回、前々回)。

 しかしながら、小坪慎也市議は、『行橋市議会員 小坪しんや』(2016年、青林堂)の中で「税金を安くしたいのであれば、扶養親族をどんどん増やしていけば良いのです。しかし、そんなことはできませんし、できるはずもありません。できるのであれば、みんな税金は0円です。国は成り立ちません。しかし、できないのは日本人だけであり、外国人(*1)はできるのです。」と述べている(p.128)。

 どういうことだろうか? 小坪慎也市議の主張をまとめると以下のようになる。

 まず、小坪慎也市議は、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」と述べている(*2)。じつは「二重扶養」という概念が正確に何を指すのか説明がないため不明である。だが、言いたいことを斟酌すれば、要するに日本人であれば税制上不正は不可能である、ということだろう。

 そして、その上で、「外国人」の場合は状況が異なり、国外に居住している親族に関しては、実際にその親族を扶養しているのか日本の役所で把握できないため、扶養控除が取り放題である(不正をやり放題である)と述べる(*3)。

 そしてその「根拠」について小坪慎也市議は次のように指摘している。

@ 「日本人」の場合は住民基本台帳ネットワークで「二重扶養」(*4)のチェックや被扶養者の収入の確認ができている(*5)。だが国外に居住している親族に関しては行えない(*6)。

A 国外に居住している親族への生活費の送金を確認することができない(*7)。


2.小坪慎也市議の主張に対する反論

 そもそも、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」という小坪慎也市議の主張は正しいのだろうか?

 また、@の「「日本人」の場合は住民基本台帳ネットワークで行われている二重扶養のチェックや被扶養者の収入の確認が国外に居住している親族に関しては行えない」ため、不正がし放題となっているという主張は正しいのだろうか?

 それについて、小坪慎也市議が市議会議員を務めている行橋市の税務課市民税係に実際の業務はどうなっているのか問い合わせてみた。税務課市民税係では、市民税と県民税の徴収を担当している(*8)。

 まず、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。」という小坪慎也市議の分について本当なのかどうかを問うた。その回答を要約すると以下のようになる。

 今現在、行橋市の税務課では、住民基本台帳ネットワークを見ることはできない。現在は、行橋市で作っている住民基本台帳と行橋市で現在までに把握できている扶養・被扶養関係の情報のみ(*9)を見て税務の処理を行っている。

 つまり、行橋市に関しては、税務の処理上「住基ネット」を使っていない、というのだ。

 では、実際に「二重扶養」の確認はどのようにして行われているのだろうか?それに関する回答を要約すると以下のようになる。

 「二重扶養」のチェックに関しては、行橋市の外に被扶養者が居住している場合、その自治体(「C市」とする)に対して「C市に住んでいるB氏が行橋市に住んでいるA氏の扶養に入っているが、B氏の収入は被扶養者の要件を満たすのか」を問い合わせる形で照会している。

 しかし、税を申告する際に、確定申告でも源泉徴収でも、書類が詳しく書かれておらず、被扶養者の住所が確認できない場合がある。そうすると、どこの市町村に問い合わせをすればいいのかがわからない。その場合は(実際に扶養していないということが証明できないため)扶養控除を認めることにしている。

 本来なら、被扶養者の住所の確認までするべきだが、データ量がとてつもなく多いので、(行橋市では)そこまでやっていない。


 そしてこうも言っていた。

 現状を正直に言うと、人員削減のため人手不足になっているので、その中で業務を進めるためには、こうするより仕方ない。行橋市全体の市県民税の徴収を行う市民税係では、2011年から2012年にかけて人員が1人削減され、現在では係長も含め8人で業務を行っている。

 つまり、行橋市に関して言えば、日本国内に居住している人々であっても、全ての場合にその収入や扶養・被扶養関係が把握できているわけではなく、実際には被扶養者の存在自体が確認できない場合も多くあるということである。そして重要なことは、その場合には実務上、扶養控除を認めている(実際に本人が扶養していないことが証明できないから)ということだ。

 行橋市の市議会議員である小坪慎也市議がこのことについて知らないということはないと思われる。

 以上のことから見えてくるのは、「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています。それ以前の問題として、誰が誰の扶養に入っているかが確実に把握できています。」という小坪議員の主張がじつは正確ではない、ということである。これは「外国人」であるか「日本人」であるかは関係がない。

 1)実際には、「日本人」か「外国人」かにかかわらず、そして、国内に居住しているのか国外に居住しているのかにかかわらず、収入や扶養・被扶養の状況の全てを把握できているわけではない。その責任は自治体や国そして人員削減にあっても、「外国人」にはない。

 2)また、「二重扶養のチェック」ができないということは「外国人」が不正を行っているという主張の論拠にはならないことは明白である。仮に「二重扶養のチェック」ができないというなら、それは「外国人」も「日本人」も変わらない。もしそれを理由に扶養控除を廃止せよと主張するならば、「日本人」の扶養控除も廃止しなければなるまい。

 仮に本当に「二重扶養のチェック」を問題にするならば、小坪議員は各自治体の人員削減に異を唱え、公務員の増員を主張しなければならないはずである。それにもかかわらず、小坪慎也市議は、「外国人」が実際には被扶養者に当たらない者を不正に扶養に入れ、「脱税をしている」という印象操作を行っている。これは「外国人は不正を行うものだ」という偏見を流布し、レイシズムを煽動する。市議会員という立場にいる政治家のこのような「主張」を野放しにすることは大変危険である。

 だがまだまだ問題がある。

 じつは小坪議員が「日本人の場合は、住基ネットに登録されていることもあり、二重扶養のチェックや収入の確認が徹底的に行われています」と言っているのだが、この住基ネットには外国人(外国籍者)も3か月未満在留者などを除けば対象としている(*10)。日本国民も外国籍者もともに登録されている住基ネットを根拠にして、なぜ「日本人の場合は」という限定をかけられるのだろうか?

 事情を知っている人であれば誰でも疑問に思うこの点については次回以降書くことにする。

 一方で、小坪市議は、「外国人が不正に扶養控除を多くとっている」ことの証拠として、会計検査院の調査報告書から「数字」をあげている。次回はこの会計検査院の調査報告書について検証したい。

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*1 小坪慎也市議のいう「外国人」とは、外国籍者だけを指しているわけではない。この点は第一回のブログでも指摘したが、とても重要な点である。小坪慎也市議の「外国人」の「税金を格安にするカラクリ」の論理は、海外に親族が居住している親族の生活実態を日本の役所が把握できないということを主要な論拠としている。その論理の中では、「外国人」を海外に被扶養者となる親族が居住している者としているようだが、その条件だけであれば、日本国籍取得者や1年以上海外に居住している留学生などの親族も含まれることになるだろう。また、外国籍であっても、海外に被扶養者となる親族がいない者もいる。それゆえ、「外国人」が「税制優遇を受けている」という主張は筋が通らない。加えて、明らかに日本国籍取得者なども含めた「外国人」という人種・民族集団を指して脱税の容疑者として扱い、「日本人」の敵として提示することはレイシズム以外の何物でもない。そのため、以下の文では、「外国人」という言葉にはカッコをつけて記載する。

*2 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.129 ll.11−13

*3 「はっきり申し上げますが、外国人の本国の親族、つまり国外親族の扶養控除は取り放題なのが実態です。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.130 ll.8−9)
「「厳しくチェック」「不正は不可能」なのは日本国内だけなのです。最大の問題ですが、当たり前のことを書きます。日本の法律が及ぶのは、基本的に日本国内だけです。よって国外に居住する控除対象親族(以降、国外扶養親族)の実態はよくわかりません。他国には他国の法律があり、住基ネットで接続されているわけではありません。収入がいくらあるのか、実際のところはわかりません。生きているか死んでいるか、そもそも本当に存在しているのかどうかもわからないのです。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.128 l.11-p.129 l.3 )

*4 小坪議員のいう「二重扶養」という言葉は所得税法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE096.html)にも所得税法施行令(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE096.html)にも、存在しない。小坪議員がいう「二重扶養」が何であるかは不明であるが、言いたいことを斟酌すれば、同一の親族に送金していることで、複数の人物がそれぞれ重複して扶養控除を取っている状況のことを指すのかもしれない。これは「できない」とされているようだ(国税庁HP,Q5参照,https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

*5 注A参照

*6 「しかし、外国人の親族はどうでしょうか?つまり、日本で働く外国人の「母国の親族」です。当然のことですが、日本において誰かの扶養に入っていることはありません。万が一、誰かの扶養に入っていたとしても、国外の居住者を住基ネットに登録しているわけではないため、二重扶養のチェックも事実上できません。」(『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.129 l.14-p.130 l.3)

*7 『行橋市議会員 小坪しんや』2016年,青林堂 p.145 l.5-p.147 l.10

*8 地方税法 第三百十九条 2項 市町村は、個人の市町村民税を賦課し、及び徴収する場合においては、当該個人の道府県民税を併せて賦課し、及び徴収するものとする。

*9 実際に「住民基本台帳」に載っているのは、氏名、生年月日、性別、住所などである(総務省,住民基本台帳等,http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/gaiyou.html)。
では、住民基本台帳と行橋市の住民基本台帳と現在までに把握できている扶養・被扶養関係の情報とはどのように関連付けられているのだろうか?以下が、行橋市の回答の要約である。
 行橋市内に住んでいる住民の扶養・被扶養関係に関しては、税務署への確定申告や会社の給与支払い報告書をもとに収入関係を把握し、その情報が行橋市で作っている住民基本台帳と個人コードによって関連付けられている。しかし、行橋市外に住んでいる被扶養者に関しては、納税者自身の申告や行橋市が現在までに行った他の自治体への照会によって、行橋市で把握できている扶養・被扶養関係の情報のみがのせられている。


*10 総務省,外国人住民に係わる住民基本台帳制度, http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu/
posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 18:21| Comment(0) | 「税制優遇」徹底批判
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