2016年06月01日

小坪慎也「外国人の税制優遇」徹底批判 第1回 被扶養者の人数が違う「外国人世帯」「日本人世帯」

 ARICのブログを開設しました。今後、主に学生ボランティアチームで行っている学習会の議論を反映させた、ヘイトスピーチ・レイシズムの批判を定期的にアップしてゆきます。反差別活動にご活用くだされば幸いです。

 第1回は、福岡県行橋市の小坪慎也市議のヘイトスピーチです。

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 2016年4月14日の熊本地震で「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ」という虐殺扇動デマが大量に拡散されたが、その虐殺扇動デマを公然と擁護したのが、福岡県行橋市議の小坪慎也氏である(http://ironna.jp/article/3143)(ARICで抗議するキャンペーンをしています〔リンクはこちら〕)。

 小坪氏はその他にも「外国人の税制優遇」の証明を完成させたと主張し、全国の市議会・県議会で「外国人の税制優遇の見直し」を求める意見書の採択運動を展開している(小坪慎也『行橋市市議会員 小坪しんや』、2016年、青林堂、pp.157-182より)。

 小坪氏のいう「外国人の税制優遇」なるものは、驚くべきことに小坪議員自らが恣意的に仮定した世帯の人数の違いに由来するものであり、「日本人」と比べて「外国人」のみが「優遇」されているわけではまったくない。政治家がこのようなレイシズム扇動を大々的に行っていることは、決して看過できない。

 このブログは、小坪氏の「外国人の税制優遇」についてARICの学生ボランティアメンバーで議論した内容をまとめたものである。


1.小坪氏のいう「外国人の税制優遇」とは

表@ 所得税及び住民税シミュレーション
20150601-table1.png
(小坪しんやのHP〜行橋市市議会員、【外国人の扶養控除】陳情時に持っていくもの(印刷物一覧)、3-2添付資料1 https://drive.google.com/file/d/0B8BIjQLKlyA2RHJQQjRZMy1KSmc/view


 小坪氏は、自身のブログや著書で「外国人(もしくは外国人を配偶者に持つ者)は、税金を格安にできるカラクリ」があり、行橋市の場合は「ワーキングプア層で、年額50万もの差」が出ると主張している。その例として示しているのが表@である。

 表@は、行橋市議会平成25年度12月定例の質問で小坪氏が提出した資料の一部である。小坪氏はこの表の「日本人世帯」と「外国人世帯」を比較した場合、支払う税金に年額50万円以上の差が出るというシミュレーションを出している。

 結論から述べると、表@の50万円という差は、そもそも全く被扶養者の人数のちがう世帯を「日本人世帯」と「外国人世帯」として比較することで算出されたものであり、外国人の税制優遇というのは単なるデマである。

 以下、その「カラクリ」の嘘と、この表が持つレイシズム扇動効果について説明する。


2.小坪氏の「外国人の税制優遇」の嘘

 小坪氏が表@を作成する際に問題としているのが「扶養控除制度」だ。扶養控除制度とは、所得税や住民税を徴収するときに、納税者に扶養する家族がたくさんいる場合には、税負担を軽減させる制度だ。つまり、養う家族の人数が多ければ多いほど負担する税額は低くなっていく。

 小坪氏が作成した表@は、「日本人世帯」「外国人世帯」と書いてあるから騙される人もいるかもしれない。だがその比較がデタラメであることは、ちょっと考えれば、誰が見てもすぐにわかる。この表には

※1 日本人世帯:全員日本国籍であり、所得上、祖父母を扶養できないと仮定。
※2 外国人世帯:本人、もしくは配偶者〔が外国人〕であり、海外に居住する血縁者を簡便に扶養控除に入れることができると仮定。


という注がついており、さらに表の説明として

上記表の外国人世帯とは、妻を含め5名の扶養です。日本人世帯との差は僅か4名に過ぎず、外国人であれば簡単に非課税世帯にできます。

という文が添えられている。

 うーん、よくわからない。そう思われる読者も多いと思われる。

 いったい「日本人世帯」と「外国人世帯」とはそれぞれ何人なのか?

 小坪氏の表はこの点について極めてわかりにくく書いており、説明も酷く不親切である。彼の次の説明を総合すると次のようなものだと考えられる。

 @表では「夫、妻、子1人(3歳児未満:扶養控除対象外)」とある。ここから「日本人世帯」と「外国人世帯」も同じく3人世帯と考えられる。

 Aだが注では「外国人世帯とは、妻を含め5名の扶養です。日本人世帯との差は僅か4名」とある。@でみた通り「夫、妻、子1人」の3人世帯(そのうち「子」は「扶養控除対象外」)のはずなので、「外国人世帯」が「妻を含め5名の扶養」というのは、「妻」+(子を除いた)4名の扶養だと理解できる(「日本人世帯との差は僅か4名」とはこうして理解しうる)。

 つまり、小坪氏の言う「日本人世帯」とは3人世帯のことであり、「外国人世帯」とは3人世帯+4名の被扶養者を追加したもの、のようである。

 要するに、上の表は、「3人世帯」と、「3人世帯+4名の被扶養者」を比較した表だったのである。両者が扶養控除制度によって納税額が異なってくることは明らかだ。何の不思議もない。

 ところが問題は、「3人世帯」と「3人世帯+被扶養者4名」を、「日本人世帯」と「外国人世帯」というラベルを貼り付けて比較していることである。

 (表@の税額がどのように異なるかは説明が乏しく不明な点が多いが、次のようなものだと考えられる。扶養控除制度を使えば、左の3人の世帯(夫、妻、子1人)では、基礎控除と配偶者控除を含めて76万円(住民税では66万円)が所得から控除される。もう一方の右の世帯(夫、妻、子1人、その他4人の扶養者)では扶養家族が多いため、基礎控除、配偶者控除、扶養控除を含めて最低でも228万(住民税では198万)が所得から控除されることになる。所得控除の金額については表Aを参照。)

表A 所得控除金額一覧
20150601-table3.png
(国税庁HP、所得控除のあらまし、https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1100.htm
住民税については、行橋市HP、住民税とは http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013112000194/

 右の「3人世帯+4名被扶養者」では、控除額が所得額を超えるので、非課税世帯となり、保育料などの行政サービスで減免措置が取られることになる。つまり、表@で示されている50万円の差とは、課税世帯か非課税世帯かの違いによるものでしかない。外国人か日本人かは全く関係ない。

 仮に家族に外国籍者がいても左の世帯であれば課税世帯となるし、逆に世帯の全員が日本国籍であっても右の世帯であれば、当然非課税世帯となる。

 小坪氏は表@で「3人の世帯」と比べて扶養家族が多い「3人の世帯+4名被扶養者」の税金が減免されていることを指して「外国人特権だ」などと主張していることになる。


3.差別扇動

 小坪氏の「外国人の税制優遇」の論理には、すくなくとも2つの差別扇動効果がある。

 一つ目は、この表@自体の差別扇動効果だ。前に書いた通り「日本人世帯」「外国人世帯」をでっちあげることを通じてレイシズムを煽動している。表@はそれ自体が拡散されることで差別扇動効果を持つ。

 二つ目は、小坪氏が「外国人の税制優遇の証明」に依拠して行っているデマの拡散による差別扇動効果だ。小坪氏は、著書『行橋市市議会員 小坪しんや』(2016,青林堂)やHP上の漫画など使って「外国人の税制優遇の証明」のデマを拡散している。

【拡散】漫画でわかる外国人特権〜税金がゼロになる仕組み
https://samurai20.jp/2015/08/relateddocuments1/
【拡散】漫画でわかる外国人特権A~日本人への結婚差別
https://samurai20.jp/2015/09/relateddocuments3/
【拡散】漫画でわかる外国人特権B〜さらなる改善が必要な理由(年末調整編)
https://samurai20.jp/2015/12/relateddocuments4/

 小坪氏はそのデマの中で、「外国人は税金が安くなるのだから、その分安い賃金でも生活していける。それが、日本人の賃金を押し下げている。」「外国人を配偶者に持てば税金が安くなることが、日本人女性への結婚差別を招いている。」という持論を展開している。これらの論理は、「外国人の税制優遇の証明」というデマに基づいて展開されたものであり、全く根拠がないものだ。しかし、そのデマが、政治家である小坪氏によって発信されることで正当性を与えられ、大々的に拡散されているのである。

 小坪氏が言う、「外国人」とは、外国籍者だけを指しているわけではない。表@では海外に親族が居住している者を「外国人」としているようだが、その条件だけであれば、留学生の親やその他多くの日本国籍取得者も含まれることになるだろう。しかし、小坪氏の主張を見ると、明らかに日本国籍取得者なども含めた「外国人」という人種・血統集団を指して脱税の容疑者として扱い、「日本人」の敵としてこきおろしている。


4.差別扇動の広がり

 現在、このデマは、ネット上で拡散されているだけではない。小坪氏は著書『行橋市市議会員 小坪しんや』(2016,青林堂)の中で「この記事(外国人の税制優遇の証明)はネットを問わず、今後の保守運動にとって大きな武器となることでしょう。」と述べている。実際に、小坪氏の主導のもと、全国の地方議会で「外国人特権の見直し」を求める意見書が採択され、内閣総理大臣、国会、関係行政庁に提出されている。また、2015年度の税制改正により、「国外居住親族」の扶養控除適用の厳格化が行われた(https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/kokugaifuyou_leaflet.pdf)。

 この流れに対抗するために、小坪氏や同氏に賛同する地方議員たちの主張する「外国人特権」を徹底的に批判、検証することが必要だ。

 本記事では、全3回に分けて、小坪氏の「外国人の税制優遇」論を批判し・発信していく予定だ。

*6月2日、一部修正しました。
posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 19:49| Comment(0) | 「税制優遇」徹底批判
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