2016年08月07日

〔政治家のレイシズム利用〕ケース1 和田政宗 参議院議員 第1回

 今回から、政治家レイシズムについて新連載を始めます。

 今回ブログで取り上げるのは東北地方における政治家の差別煽動の実態です。現在、ARICでは「政治家レイシズムデータベース」を随時更新中です。現在まで1035件の政治家によるレイシズムを確認しています。( http://antiracism-info.com/database_home

 ARICの「政治家レイシズムデータベース」においては以下の調査基準をもとに政治家のレイシズムを集めています。

「レイシズム」とは:基本的には人種差別撤廃条約第一条の「人種差別racial discrimination」の定義に該当する疑いのある「政治家」の発言/行為のこと。ただし以下のものを「レイシズム」に含めるものとする。
1)人種差別撤廃条約第四条で法規制が義務付けられているヘイトスピーチ(差別/レイシズム煽動)
2)上記1)の効果を持つ歴史否定/修正主義
3)「政治家」個々人の「レイシズム」を時系列的・継続的に監視する上で関連する同条約第一条「人種差別」以外の一般的な差別


 なお、人種差別撤廃条約第一条による「人種差別」の定義とは以下のようなものです。

1.この条約で、「人種差別」とは、政治的、経済的、社会的、文化的その他あらゆる公的生活の領域で、人権と基本的自由の平等な立場における承認、享受又は行使を、妨げたり害したりする目的や効果を持つ、人種、皮膚の色、世系や民族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限や優先を意味する。



◯政治家による差別煽動の禁止

 調査基準の一つである人種差別撤廃条約では第4条(c)の項目において政治家がレイシズムを煽動することを禁止しています。

第4条
 締約国は、@人種的優越や、皮膚の色や民族的出身(ethnic origin)を同じくする人々の集団の優越を説く思想・理論に基づいていたり、Aいかなる形態であれ、人種的憎悪・差別を正当化したり助長しようとする、あらゆる宣伝や団体を非難し、また、このような差別のありとあらゆる煽動・行為の根絶を目的とする迅速で積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言で具体化された原則と本条約第5条が明記する権利に留保し、次のことを行う。
(c)国や地方の公の当局・機関が人種差別を助長し又は扇動することを許さない


 人種差別撤廃条約に照らして考えると政治家はそもそも差別煽動してはならず、むしろ自分がレイシストではないことを積極的に表明する必要があると言えます。

 人種差別撤廃条約でこのように政治家のレイシズムを禁止しているのはなぜでしょうか?

 それは「一般的に国や行政が行う差別や政治家はじめとした公人によるレイシズムは、市民によるヘイトスピーチよりはるかに強力に、市民社会のレイシズムに正当性を与え、差別煽動効果を発揮する」からです。

 具体的には2013年に発表された人種差別撤廃委員会による一般的勧告35「ヘイトスピーチと闘う」においても、「当局又は機関から発せられる人種主義的表現、特に上級の公人によるものとされる発言を、委員会は特に懸念すべきものと判断する」(同パラグラフ22)としており、「当局又は機関」「特に上級の公人」による差別煽動に注意喚起を促しています。


◯政治家が差別煽動を行うことによって得られる利益

 政治家による差別煽動が深刻な問題である一方、政治家の側からすると差別煽動をすることは自らの利益になるといえます。

 アルベール・メンミは『人種差別』(法政大学出版、1996年)という著作の中で、レイシズムを「ある差異の、自分の利益のため利用」(4頁)と定義しています。

 差別煽動を行う政治家の立場からするとヘイトスピーチや「歴史否定/修正主義」(以下、「歴史否定」)という形で差異を利用することによって愛国的な「保守層」に訴えかけ自分の支持を集めることができるなどといった、具体的な利益を得ることができます。

 これらの差別煽動を規制する規範が社会的に存在しなければ政治家は自らの利益のために差異を利用し差別煽動を続けるでしょう。

 その意味でも現に政治家がレイシズムという差異を「どのような回路で利用しているのか」を突き止め、これらの「差異の利用」を不可能にし、その回路を断ち切ることが反レイシズム規範を作っていく上で実践上重要になります。

 現在、日本では政治家のレイシズムが野放しにされています。その中で、レイシズムを自らの利益のために利用する政治家が実際に現れはじめています。その具体的な例を数回にわたり紹介していきます。

 最初に紹介するのは宮城選挙区選出の和田政宗参議院議員です。


ケースT 和田政宗 参議院議員

 和田政宗氏は1974年生まれの41歳。慶応大学卒業後、NHKに入社し、アナウンサーとして働き始めます。大阪局勤務を経て2009年から2013年まで仙台局に勤務します。仙台局では、夕方のニュース番組のメインキャスターなどを務めるなど、宮城県内で一定の知名度を有していました。その知名度を生かし、2013年の参議院選挙宮城選挙区にてみんなの党から出馬。初当選を果たしました。その後、党の再編に際して次世代の党に所属、現在は日本のこころを大切にする党の政調会長を務めています(詳しくはHP http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013064.htm

 和田氏は当時解禁された「ネット選挙」を用いて「レイシズム」を利用し、票を集め、国会議員になった実例です。以下において和田氏がいかにして「レイシズム」を利用したのかを見ていきます。


◯ネット選挙の利用

 和田氏は2013年にみんなの党から出馬し当選しましたが、この時に宮城選挙区で激しく争ったのが民主党(当時)の岡崎トミ子氏です。実際、和田氏は岡崎氏に約5000票差という僅差で勝利しており、接戦だったことがわかります。

当 421,634 愛知治郎  自現(3)
当 220,207 和田政宗  み新(1)
  215,105 岡崎トミ子 民現
   76,515 岩渕彩子  共新
    9,662 皀智子   諸新
http://go2senkyo.com/sangiin/27/prefecture/4 )


 この選挙戦の中で和田氏は、当時解禁されたばかりの「ネット選挙」をフル活用しました。和田氏自身、地元紙である河北新報の記事の中で「ネットがなければ引っくり返せなかった。」と語っています。(2013年7月24日 朝刊)
20160807wada.png
  
 新聞記事のほか、ユーチューバーのKAZUYA氏が投稿した動画においても和田氏はネット選挙について触れています。

【トミ子を打ち破った男 和田政宗に会ってきた】 https://www.youtube.com/watch?v=q9yjIPq0Va8


 この動画においても「選挙の勝因」について聞かれた和田氏は、「ネット選挙」であったと答えています。(動画1:53〜2:30ごろ)


◯ネット選挙における「レイシズム」

 和田氏が「なければ勝てなかった」と語るネット選挙ですが、その内容はどのようなものだったのでしょうか?

 これについても河北新報が詳しく報じています。

2013参院選/宮城選挙区/みんな・和田さん、2番手狙い逆転/ネット戦術が奏功
ネット選挙の申し子が金星を挙げた。2議席目に滑り込んだみんなの党新人の和田政宗さん(38)の陣営はインターネットをフル活用。団体の支援を受けず、物量に劣るハンディを克服した。
 公示日の4日朝、奇襲を仕掛けた。民主党現職の岡崎トミ子さん(69)が2003年の訪韓時、元従軍慰安婦による日本政府への謝罪要請の場にいたのを「反日デモ参加」と指摘する動画を公開。先行する自民党には目もくれず、2議席目に照準を絞り逆転を狙った。
2013年7月22日 河北新報(朝刊)16面

20160807wada2.png

 この記事の中に出てきている動画が次のものです。

【ネット選挙】岡崎トミ子 反日デモ参加 https://www.youtube.com/watch?v=tzeUWW7rVhk


 和田氏は「政宗ちゃんねる」と名付けた自身のユーチューブのチャンネルからこの動画を発信しました。

 この動画の中では

「あなたは知っていますか?」
「反日デモに参加した宮城の政治家がいることを_」
「参院選 宮城選挙区 民主党 岡崎トミ子氏(69)」
「あなたの一票を託せますか?」

という字幕を流し、韓国の元「慰安婦」による日本政府への謝罪要請を「反日デモ」と呼称し、その場にいた岡崎氏のことを「反日」政治家だとするネガティブキャンペーンを張っています。

 次回は和田氏のこの動画がなぜ「レイシズム」なのかを詳しく見ていきます。
posted by 反レイシズム情報センター(ARIC) at 11:29| Comment(0) | 政治家のレイシズム利用